コラム「南風」 小さな介護者たち


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 私たち母の介護は主に私たち夫婦、息子夫婦、孫たち、2人の姉によって担われた。母は介護者に恵まれていたといえよう。

 それでは、わが国における介護者の状況はどうなっているのであろうか。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2013年)によって主な介護者をみると、配偶者が26・2%、子が21・8%、子の配偶者が11・2%で、わが国の介護は高齢女性を中心とした老老介護を特徴としている。
 私たち介護の特徴として、手抜き介護と幼い孫たちの存在がある。介護者というと成人介護者に限定してしまい、幼児や児童の存在を除外しているのが普通である。これは、身体介護を想定して大切な「心の介護」を軽視しているところにあると思われる。
 認知症介護における、幼い子どもたちの役割は大きい。そのことは、幼児のいる家庭なら、納得していただけるものと思う。また、子どもの心の育ちにとって認知症高齢者の果たす教育的役割も大きい。母と幼い孫たちとの関わりをみると、小さい介護者たちはいとも簡単に“はたけのばぁちゃん”の心に入り笑顔にさせる魔法の手とことばを持っているし、私の母も言葉を持たなくても、無言のうちに子どもたちの心をとらえ、“大好き!はたけのばぁちゃん”にさせているのである。認知症になった母の心と幼い孫たちの心は近く、通じ合うものがあるように思う。介護では、何十人の大人の介護者でも1人の子どもにはかなわない。
 国の高齢者介護研究会報告書「2015年の高齢者介護」は「児童と要介護高齢者の交流の機会を広げていくことは、…わが国の社会の将来にとって大変に重要な意義を有する」と指摘している。認知症800万人時代に向けて、幼少期から認知症理解の福祉教育を家庭、地域、学校で取り組むことが求められている。
(神里博武、社会福祉法人豊友会理事長)