コラム「南風」 チキンと24時間


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 「24時間働けますか。」25年前、日本を席巻した栄養ドリンクのキャッチコピー。今ではブラック企業だと叩(たた)かれまくりそうなフレーズだが、24時間365日、私の時間は今のところ、だいたいチキンに捧げられている。

 仕込みや販売、片付けなど店舗で働く時間はもちろん、夜はチキンを使った料理を試作し、別店舗の丸焼きを食べ比べ、チキンパーティーの企画をまとめ、チキンについての想(おも)いをブログにつづり、こうして書いているコラムもまた、チキン。母サチコには「そろそろ違うことを書いてはどうか」と言われているが、頭の中にチキンしかないのだからしょうがない。
 「3、4時間戦えますか?」。25年前に「24時間戦えますか」とうたっていた企業が先月発売した商品のキャッチコピー。現代人が企業戦士として働ける時間は24時間から3、4時間に。なんとわずか1/6時間。
 人々の意識が企業の発展や日本の経済成長から、自分らしさや生活の豊かさへと移り変わっていると感じる今。そもそも仕事とは何か、働くとは何か、24時間チキンでいっぱいの頭で考える。
 「仕事と人生を切り離して考えてはいけない」。アメリカで億万長者を何人も輩出しているコンサルタント、ジム・ローンの言葉。私にとってチキン屋で働くことは仕事でもあり遊びでもあり、2代目としての可能性でもあり、自分らしく生きるための手段でもあり、人生そのものである。ニーブイしながらコラムを書いたり苦しいこともあるが、それも含めて24時間注ぎ込んでもいいと思える仕事ができるのは本当に幸せだ。
 私にとって仕事は「私事」であり「志事」。だが、2代目が遊んでるから味が落ちたなんて言われないようチキンと、いや、キチンとチキンに向き合っていきたい。
(幸喜ブエコ朝子、「ブエノチキン浦添」2代目)