コラム「南風」 東京の景色


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 赴任して数か月経ったが東京は未だ非日常である。最大要因は人の多さとそれが生み出す活気にある。

 渋谷駅前のスクランブル交差点のあふれんばかりの人の動きは、全体が一つの生き物のようにも見える。外国人観光客がその光景を写真やビデオに写し取っている。まさに観光資源そのものである。ラッシュ時の山手線(他の路線も同様とのこと)の乗客の過密さには圧倒もされるが、同時に大都市のエネルギーというものも感じる。あまりの過密さに定員はないのかと考えてしまった。電車の定員は「乗客にとって快適な乗車人数の目安」で、安全上規制対象となる定員はないようである。乗車率200%のような数値の意味が多少理解できたように思う。定時性やICカードによる改札の手軽さなど、電車が利便性の高い優れた乗り物であることを日々実感もする。
 先日、代々木公園から渋谷駅に向かう途中、NHK近くの広場で「アセアンフェスタ2014」という催しに出合った。アセアンの若者による出店が立ち並び、多くの人出で賑(にぎ)わっている。屋外ステージでは演奏も始まるというので暫(しばら)く立ち止まることにした。
 やがて「6名の女性グループ(日本人でした)プルメリアによるインドネシア音楽の演奏です」とアナウンスがあり曲の演奏が始まった。ところが、流れてきたのは一曲目「ハイサイオジサン」二曲目「花」三曲目「島唄」である。
 一瞬ん? と思ったが「沖縄は東南アジアとも関わりが深く、この三曲は私たちが大好きな曲なので初めに演奏しました」という演奏後の言葉にモヤモヤも吹き飛び、「沖縄メロディが大好きということは沖縄が大好きということだ」と勝手に解釈して気分良くその場を離れた。刺激的な大都市東京、誰もがアクティブに生活を楽しんでいる。
(大山清、沖縄県県外学生寮南灯寮寮監)