コラム「南風」 挑戦するこころ


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 ストリートダンスには「ダンスバトル」というものがあります。ダンサー同士向かい合い、その場で流れる音楽に合わせて即興で踊り、相手を挑発したり、自分のテクニックを披露したりして、勝敗を決めます。

 観客の視線、相手からのプレッシャーの中、実力を発揮するには練習と慣れ、何より度胸が必要です。満足に踊れず負けるのは悔しいし、羞恥心に苛(さいな)まれることもしばしばです。
 厳しい世界ですが、敗北から学ぶことはとても多く、勝利の喜びは何ものにも替え難いものです。
 先週、県総合運動公園で「KSバトル」というダンスバトルが開かれました。ここではバトル未経験者や初心者のみ挑戦できる「ビギナー部門」が用意され、下は小学生から上は社会人が同じ舞台で火花を散らしました。
 惜しくも予選通過できず、悔しい表情を浮かべたダンス歴4カ月の後輩は、イベント終了後には「出場していろんなことに気づけた。また挑戦する!」と、晴れ晴れした顔で話をしてくれました。
 私が初めてバトルに参加したのは、ダンスを始めて数カ月たったころです。勢いで出場を決意した当時の自分を褒めてあげたいし、現在まで数々の戦いを重ねていく上で、実生活で直面する、何かに挑戦する際の心の持ち方を学んだように思います。
 ダンスバトルに初めて挑戦するには非常に勇気が要りますが、怖さを乗り越えて果敢に挑んだとき、今まで知らなかった自分に気づくことができます。
 それは、一歩踏み出す度胸が自分には備わっているという事です。その事実が自信に繋(つな)がり、自分の真の実力を発揮する土台となるのです。そうして鍛えられていく心は、人生のさまざまな場面で活(い)きていくことでしょう。
(伊狩誓志、ストリートダンス講師)