コラム「南風」 認知症カフェ


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 認知症になった皆さんや家族、ボランティア、専門家等が集う場として認知症カフェがある。これまで、認知症になると何もかも分からなくなり、できなくなるといった誤った認知症観のもと、どちらかというと保護的介護が一般的に行われてきた。しかし、特に初期認知症であれば、少しの支援があれば職業生活や社会参加活動も可能なのである。

 国も「認知症施策推進五カ年計画(オレンジプラン)」(平成25年度~29年度)で、「認知症カフェ」の普及を挙げている。「公益財団法人・認知症の人と家族の会」は、全国の認知症カフェ28カ所を対象に調査を行い、昨年3月に『認知症カフェのあり方と運営に関する調査研究事業報告書』をまとめているが、認知症カフェの意義として、次の7点を挙げている。(1)認知症の人が、病気であることを意識せずに過ごせる(2)認知症にとって、自分の役割がある(3)認知症の人と家族が社会とつながることができる(4)認知症の人と家族にとって、自分の弱みを知ってもらえて、かつそれを受け入れてもらえる(5)認知症の人とその家族が一緒に参加でき、それ以外の人も参加・交流できる(6)どんな人も自分のベースに合わせて参加できる(7)人がつながることを可能にするしくみがある。このような認知症カフェがあれば、閉ざされた認知症の未来も大分明るいものになるだろう。
 最近、沖縄県内でも認知症カフェが設置された。これを契機に、身近な地域でも当事者主体の認知症カフェが設置されることを願っている。私も、その設置促進を目指して、3月に『介護~いのちを輝かすために』を発行したところである。認知症800万人時代においては、立ち遅れている認知症の人の居場所づくりや社会参加等、認知症本人の尊厳を高めるための取り組みを急ぐ必要がある。
(神里博武、社会福祉法人豊友会理事長)