コラム「南風」 チキンと父から


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 私は100%、父の血を引いている。
 「朝子はギャグ禁止!」広告のキャッチコピーをつくるコピーライターとして働き始めた22歳、ギャグ案ばかり出す私は早々に上司からギャグ禁止令を言い渡された。一体どうしてこんなしょうもない文癖がついてしまったのか。どうしてお洒落(しゃれ)で洗練されたキャッチコピーが生み出せないのか。われながら不思議でしょうがなかったが。

 「ハゲましておめでとーう!!」近所の小学生に、店長ハゲてる?と聞かれた父コウエイ。威勢よく駄洒落を叫び小学生に苦笑いされる後ろ姿を見て確信する。私は100%、父の血を引いている。
 「どうしてコピーライターになったの?」沖縄では珍しい職業だからか、よく聞かれる質問。小さいころから作文が得意だったわけでも、テレビCMが特段に好きだったわけでもなく、一体どうしてこんなに広告の言葉に惹(ひ)かれるのか。どうして脳を酷使する仕事に8年もはまってしまったのか。われながら不思議でしょうがなかったが。
 「ほっとな丸焼きでチキチキバンバン」「夏おいしく食べよう つかれ丸どり」お店の横の壁に赤いペンキで伸び伸び描かれた言葉。父コウエイが不定期で描いているそれは、紛れもないブエノチキンのキャッチコピー。微妙な、いや、絶妙なギャグが効いたフレーズを見て確信する。私は100%、父の血を引いている。
 「商売は笑売。人は人財。」2代目を始めた時、父が送ってくれたメッセージ。損益分岐点もコスト管理もまだまだ勉強中のヒヨッコ2代目だが、たくさんの仲間やお客さまが支えてくれるのは父の言葉のおかげだ。両親が32年コツコツ積み重ねてきた味と店。2代目としてギャグだけじゃなくチキンと、いや、キチンと受け継ぎ、100年目も笑売していたい。
(幸喜ブエコ朝子、「ブエノチキン浦添」2代目)