コラム「南風」 「100パーセントじゃない」


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 私たち弁護士は、法律相談を受けたときに、「ベストを尽くします。でも、百パーセント勝てるとは言えないです」と言います。

 お医者さんも、最近は手術の前に成功率何パーセントという言い方をするようになっています。「私、失敗しないので」と断言できるテレビドラマのような女医さんは、現実にはいません。それと同じように、これまで裁判で負けたことがないという弁護士もテレビドラマとは違って現実にはいないはずです。
 そうは言っても、実際に病気で苦しんでいる人を目の前にしたとき、お医者さんとしては「絶対大丈夫、治ります。私に任せておいてください」と言えたらどんなにいいかと思うことでしょう。私たち弁護士もトラブルで苦しんでいる人を目の前にして、そのトラブルを一挙に解決でき、そのトラブルにまつわる悩みを解消できる魔法の方法を示すことができたらどんなにいいだろうと思います。ところが実際には、こんな方法がある、あんな方法もある、それぞれにメリットとデメリットがあり、お金もかかる、その上、百パーセント勝てるとは言えませんという話をするしかありません。百パーセント確実で魔法のように解決できる方法などないのです。
 それでも、お医者さんが患者さんの病気を治すためにできるだけのことをするのと同じように、私たち弁護士もベストを尽くします。トラブルという問題を抱えている方々に寄り添って、トラブルそのものの解決はもちろん、相談者や依頼者の方のお話しに耳を傾けて様々なアドバイスをさせていただき、可能な限り、心のケアまでさせていただく。「百パーセント勝てます」とは言えない代わりに、せめても、問題解決にベストを尽くすプロフェッショナルでありたいと常々思っています。
(大井琢、弁護士)