コラム「南風」 たばこの値段


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 前回、子どもたちへの喫煙防止教育の大切さについてお伝えしました。科学的に解明されてきたたばこの健康被害やニコチン中毒の依存性の高さから、子どもたちの将来の喫煙を防止することはとても大切です。すると、子どもたちから素朴な疑問として、どうしてそんなに身体に悪いたばこが売られているの? と聞かれることがあります。

確かにたばこそのものを禁止することは理想的(愛煙家にとっては悪夢)ですが、既に産業として確立しているたばこを直ちになくすことはできません。国と地方併せて年間2兆円を超える税収がなくなるのも大変です。
 そこで、たばこを値上げすることで、税収は確保しつつも喫煙者の減少が期待できるという試算があり、一箱千円にしようと議論している国会議員たちもいます。税収に関しては異論を唱える人もいますが、実際にたばこの値段が上がると、禁煙に踏み切ろうという人が増えることは、過去の値上げでも実証されています。現在の値段でも1箱430円として1日1箱吸うと、1カ月で約1万3千円、1年で約16万円、5年で78万円にもなりますが、これが1箱千円になると…すごい金額ですよね。確かに値上げをしても、その強いニコチン依存のためにやめられない人もいるでしょう。しかし、安易に手が出せない金額になることで、子どもが興味本位で喫煙することは減って、彼らの健康が守られることになると思います。ひいてはたばこによって引き起こされるがんや慢性肺疾患などの病気の医療費、病気による所得や労働力の減少、火災に伴う被害、清掃などの環境保全費用、喫煙時間分の労働力の損失などさまざまな社会的経済的損失も防ぐことができます。愛煙家の皆さんには耳が痛い話ですが、未来を担う子どもたちのために改善していくべきだと思います。
(島袋 史、ゆいクリニック院長 産婦人科医)