コラム「南風」 寮の秩序は「許せる範囲」


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 「自分の行動が他人に見られていない場合、人はどう振る舞うだろうか」というのは経済学のテーマの一つにもなるようである。「やばい経済学」という書物に「ポール・フェルドマンの商売」という事例が紹介されている。

 フェルドマンはいくつかの会社のオフィスにベーグルを置かせてもらい、社員が自由に購入できるようにした。要は無人販売による行動調査である。評価基準は代金回収率(1)90%以上(正直者の会社)(2)80~90%(困ったものだが許せる範囲)(3)80%以下(困った会社)とした。結果はどうだっただろうか。考察として次の三つが挙げられている。(1)大規模オフィスより小規模オフィスが回収率がよい(2)地位の高い人が低い人よりごまかす傾向にある(3)社員の志気の高い会社、上司や仕事を好きな社員の多い会社はより正直である。そして、多くの経済学者が最も驚いたのが87%という全体の回収率の高さにあったと述べられていた。人は本来「正直」という結論のようである。
 経済学的観点にとどまらずその評価基準や結果はいろいろな場面に当てはまるように思える。考察(2)などは先頃マスコミを賑わした号泣議員の顔が浮かびそうになる。たばこや空き缶のポイ捨てなどの行動も類似的な事例ではないだろうか。
 さて、寮の秩序維持にも「見られていない」時の行動が重要である。「土足厳禁」を具体例としてフェルドマンの評価基準で考えてみた。遵守率(1)90%以上(良好な状態)(2)80~90%(許せる範囲)(3)80%以下(課題が多い)となる。わが寮はとりあえず「許せる範囲」と評価したい。
 考察部分も(1)小規模寮ほど規則をよく守る(2)高学年ほど怠ける傾向にある(3)勉学意欲が高いほどより自律的であると置き換えてみた。当たらずとも遠からずのようでもある。
(大山清、沖縄県県外学生寮南灯寮寮監)