コラム「南風」 マニアック倶楽部


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 世の中にはいわゆる「マニア」と呼ばれる人たちがいるが、Kukuluに来ている子どもたちは、学校を休んでいる間、独自の活動に精力的に励んでいるため、おおよそこの部類に入る。ゲーム、暴走、イラスト…さまざまなマニアがいる中で、私は昭和歌謡マニアの女子児童と「マニアック倶楽部」なるものを結成している。

 小学6年から完全不登校でひきこもりになった彼女は、Kukuluに繋(つな)げられた当初、家の窓から外を見ることぐらいしかできなかった。しかし児童自立支援員の粘り強い関わりと本人の頑張りにより、昨年11月にやっと私たちスタッフと会うことができた。重たい前髪とマスク姿で現れた彼女の表情を窺(うかが)えるのは、わずかな目の動きだけだったことを覚えている。
 頑張ってKukuluに来ても、誰にも話しかけることができず、一人個室で固まって本を読んでいる彼女とどう関係を築けばいいのだろう。悩む私と悩む彼女の共通点は音楽だった。中島みゆきや吉田拓郎、ブルーハーツの話がガチンコでできることがわかったのだ。他の児童はもちろん、スタッフもついてくることができない二人だけの世界、それが「マニアック倶楽部」結成へと繋がっていく。活動内容は自由だ。好きな歌をただひたすら聞いたり、好きな歌詞を自分の人生になぞらえてみたり。時にはお菓子作りや映画鑑賞をして、周りから「それはマニアじゃないだろ!」と突っ込まれることもある。直接話せないことは交換日記を使いながら少しずつ仲良くなり、そして彼女は場になじんでいった。
 彼女は自分を変えたいと思っていた。それをKukuluで行動に移したカッコイイやつなのだ。きっとこの先また壁にぶつかりまくるのだろうが、できることをやるしかないだろうな。よし、私も頑張ろっと!
(今木ともこ、NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいフードプロデューサー)