コラム「南風」 「スケ比べ」


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 来年公開予定の映画「天の茶助」(主演・松山ケンイチ)に、編集でカットされなければ出演ということになっている。現時点では“携わらせていただいた”と言ったほうがいいかもしれない。

 「他人の失敗を覚えているほど人はヒマじゃない」を胸に秘め、思い切ってオーディションを受けたら、受かった! というのが台詞(せりふ)を頂いて撮影現場に入り込めた経緯となる。
 キャストの中に、俳優の伊勢谷友介(ユウスケ)さんもいたのだが、とにかくカッコよかった。イケメンの上にスタイル抜群で、彼のことをつい眺めてしまい、何度も目が合って「あら、何だか様子がへんだわ」みたいな空気をつくってしまったぐらいだ。
 当方も“ユウスケ”で、しかも同い年なのだが、自分の細胞中にあるDNAのむせび泣く声が聞こえたのと同時に、オスとしての完全なる動物的敗北感を、妙なすがすがしさと一緒に味わった。
 どうやら、人間の身体的(容姿)な個体差がこれほどまでに激しいのは、本来、自然界で淘汰(とうた)されるべき個体が、医療のおかげで淘汰されずに生きているからだとか。確かに、野生で同種の動物などを見ると、多少の大小の差こそあれ、突出した個体は稀(まれ)である。顔立ちも大差ない。
 つまり、何度も病気をしては治療を受け、回復し、を繰り返しながら成長して現在に至る当方は、自然界ではすでに淘汰されていてもおかしくない個体であった可能性が高い。医療がもたらした恩恵と、またそのことによって生み出された“ユウスケ格差”は、大げさに言えば、医療の功罪そのものと言っていいのかもしれない。
 「いや、やっぱり言い過ぎかもしれないな」などと想いながら楽しく暮らしているのでそれで良しと言える、当方はそんな“ユウスケ”です。
(知花悠介 ナレーター、タレント)