コラム「南風」 「専門分野はありますか」


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 法律を使ってもめごとを解決するのが弁護士の仕事です。法律で解決できるもめごとにはさまざまな分野のものがあります。

 相談者や依頼者の方から「専門分野はありますか」と訊(き)かれることがあります。たしかに、テレビでは離婚問題を専門に扱う弁護士を「離婚弁護士」と呼んだりしますし、東京や大阪などの大都市では、破産などの倒産事件ばかりを扱う「倒産弁護士」や刑事事件を専門とする「刑事弁護士」らがいます。
 しかし、弁護士全体から見るとそのように専門分野を特化した弁護士は少数です。特に沖縄のような地方の弁護士は、ありとあらゆる事件を取り扱います。私自身も、損害賠償請求などの金銭請求や不動産がらみの民事事件、遺産相続に関する事件、破産事件、行政訴訟と呼ばれる国や自治体関係の事件、刑事事件などなど、実にさまざまな事件を担当してきました。その中で先輩弁護士の教えから学ばせていただき、自分でも体得してきたことがあります。それはやったことのないタイプの事件やそれまで触れたことのない法律を使うような事件であっても、依頼者の方の話をよくお聞きし、さまざまな資料や文献、法律の条文やこれまでの裁判の結果などと真剣に向き合い格闘してベストを尽くす。そうすれば、おのずと良い解決に繋(つな)げられるということです。
 ですから、「専門分野はありますか」と訊かれたときには、私は「特定の専門分野はありません」とお答えした上で、「法律を使って解決できるもめごとならば何でも、プロフェッショナルである弁護士として全力で解決にあたる自信があります!」と力強くご説明しています。
 もっとも、こんなことを言っていると、私はやっぱり「そよかぜ」ではなくて「熱風」だということになりそうです(笑)。
(大井琢、弁護士)