コラム「南風」 15秒間の勇気


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 偶然と必然という言葉がある。世の中は偶然の連続だと思っているが「必然」という言葉は人を惹(ひ)きつけそう思いたい場合もある。

 ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英先生に小学生が質問した。「先生、運命の人っていますか」。益川先生は答える。「君がある人を好きになり、結婚することを決意した瞬間にこの人は君の運命の人(必然的に出会った人)となるんですよ」。何という至言だろうと思ったものである。天職というのも同様ではないか。「この仕事を生涯やり続けよう」と決意した瞬間にその仕事は天職となるのだろう。
 こんな映画があった。若くして妻を亡くした男が経営難に陥った動物園を買い取り、子ども2人(一男一女)と園の立て直しに奮闘する。動物たちとのさまざまな触れ合いを通して、妻(母)を亡くした悲しみを乗り越え、父子の絆を強めて未来に向かって生きて行こうとする物語である。
 映画の最後に父が母との出会いを子どもに語るシーンがある。若いころジョギングしながら道路沿いのカフェに顔を向けると、たまたまコーヒーを飲んでいる綺麗(きれい)な女性と目が合った(まさに偶然)。一度は通り過ぎたが、思い返してカフェに入りその女性と言葉を交わした。これがきっかけで2人は結婚し君たちを授かることもできたというものである。それは「15秒間の勇気」のおかげであるといい、一歩を踏み出すことの大切さと「15秒間」勇気があればできるのだと子どもに伝えるのである。
 先のことは誰にも分からない。決断し行動する勇気がなければ何も変わらず、運命との出会いもないようである。県内のある高校には次のようなキャッチフレーズがある。「人生はかけ算である。どんな素晴らしいチャンスがやってきても君の努力がゼロならかけた結果は“ゼロ”である」
(大山清、沖縄県県外学生寮南灯寮寮監)