コラム「南風」 揺れる38歳


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 日本人男性の平均寿命が、80歳代になった。これで人生はおよそ80年と捉えることができる。
 厳密な定義はないが、そのうち少年の時期は15歳まで。青年の時期が16歳~29歳で14年間。65歳までを生産人口年齢と数えるので、66歳からが老人ということになって、80歳までを数えると14年間が老人という時期になる。

 まとめると、少年15年、青年14年、老人14年、となる。勘の良い方ならここでお気付きだろう。30歳から数えて65歳までの一番長い35年間が抜けている。
 そう、この時期は一般的に「おじさん」と呼ばれる時期にあたり、「おじさん」であることが人生80年において一番長いということになる。人生の大半は「おじさん」として生きていくことになっている。「もうおじさんだから、、、」なんてセリフより、せめて「いよいよおじさんだから、、、」が適当であろう。38歳の当方は、さしずめ、「おじさん前期真っ盛り」ということになる。
 ちょっと視点の物差しを変えてみる。すると、その辺の犬や猫に、当方より年上は存在しないことに気付く。犬や猫の平均寿命はおよそ16~20年となっている。公園やブロック塀の上で長老面している犬や猫よりも、こちらのほうが軽く年上なのである。
 もうすぐ齢(よわい)40を目前にして、論語でおなじみ、孔子の名言「四十にして惑わず(不惑)」が思い出される。「40歳になったら迷わず、ふらふら放浪などせずに生きてゆくのが正しい」みたいな意味だ。
 しかし、“不惑”は、“不或”が間違って伝わったという説がある。これに従えば「40歳になってもチャレンジを忘れるな」ということになるらしい。前者と後者、正直どちらも選び難い。
 38歳は、繊細で揺れるお年頃といえるかもしれない。
(知花悠介 ナレーター、タレント)