コラム「南風」 児童養護施設の子どもたち


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 親と一緒に生活することのできない子どもの施設として児童養護施設がある。県内には8カ所の施設に408人(定員)の子どもたちが生活している。

 社会福祉法人豊友会が経営している施設に島添の丘がある。島添の丘には66人の子どもたちが生活しており、朝の起床に始まり、登校、登園と家庭で行われる日々の生活が慌ただしく営まれる。それを、親に代わってあるいは専門性をもって支えているのが、保育士などの職員である。
 子どもたちの養護、生活習慣の確立や学び等は、職員による支援が大きいが、集団で生活している施設では、子ども同士の影響も大きい。特に、島添の丘では、リーダー会の役割が大きく、子どもたちにとって、リーダーは、自分たちの当面のモデルであり、また、憧れの先輩でもある。子どもの育ちにとって、目指すべきロールモデルがあるということは重要だが、島添の丘では、それが途切れることなく、後輩に引き継がれている。年間行事の中にはリーダー会主体で運営されるクリスマス会などがある。そこでは、各ホームのリーダーが、1年間のホームの取り組みを報告する。
 東日本大震災が起こった年には、リーダー会が中心になって、震災被害を共に分かち合うために自分たちは何ができるかを話し合い、節電・節水に取り組んでくれた。このように島添の子どもたちのやさしさと勇気には、いつも感心させられる。子どもたちは、島添の宝であると共に、地域の宝でもある。伝統行事の盛んな地域の行事や清掃作業には子どもたちも職員と一緒に参加して頑張ってくれている。
 虐待などの理由で入所した子どもたちが、職員や仲間たちとの関わりを通して、居場所を見い出し、情緒や生活が安定し、将来の夢実現に向けて頑張っている姿に拍手を送りたい。
(神里博武、社会福祉法人豊友会理事長)