コラム「南風」 チキンとつなぐ


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 「来月で87歳になるんですがね」私が勤めるチキンの丸焼き専門店にかかってきた一本の電話。御年86歳のその方は、戦前に鶏をつぶす作業をしていたため、かわいそうで今まで鶏肉を食べたことがないという。

 「でも、あなたのコラムを読んで食べてみようと思って」目が飛び出そうなほどうれしい言葉を頂いた。86年も避けてきたものを食べるというのは、よっぽどのチャレンジだ。このコラムがそんなにも大きな転機を生みだそうとしているとは。87歳で食べる人生初のチキンを美味(おい)しいと思ってもらえるようチキンと、いや、キチンと愛情こめて作らなければ。背筋が伸びるありがたい電話だった。
 この連載も9回目となり、北はやんばるから南は糸満、玉城。中には「離島の母がコラムを読んで食べたいと言っている」と来てくださる方もいて、本当にありがたい。さらには浦添市が運営する「てだこ市民大学」で講師をさせていただき、果てはOTVで取材までしていただいた。コラム一つでこんなにも世界が広がるものかと驚き感謝する毎日だ。
 思えば文章を書き出したのは10年以上前、大学生のころ。インターネットで日記をつけ始め、今でもブログとして書き続けているが、それを読んだ友人が南風を紹介してくれた。今こうして多くの方に思いを伝えられるのも、あの日なんとなく始めた日記のおかげだ。
 「点と点の繋(つな)がりは予測できないが、今やっていることが何かに繋がると信じれば人と違う道も自信を持って歩き通せる」とはスティーブ・ジョブズの言葉。私のブログのタイトルは「ブエノチキン浦添ブエコ、代表トリ締役への道」…チキン道まっしぐらだが、今日の一日も最高に面白い未来につながると信じてチキンと、いや、キチンと自分の足で歩みたい。
(幸喜ブエコ朝子、「ブエノチキン浦添」2代目)