コラム「南風」 「くそー!」の力


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 子どもたちに一定の振り付けを教え、私のお手本がなくても踊れるようになってきたら、定期的にダンスバトルを行います。
 ダンスバトルと言っても、以前の記事の題材で扱った、即興ダンスで競うというものではありません。クラスを2チームに分けた後、ジャンケンで踊る順番を決め、指定した振り付けをどちらが上手に踊れるかという勝負です。

 評価基準はその都度異なりますが三つのポイント((1)元気よく踊れるか(2)間違えずに踊れるか(3)踊らないときに、動かず相手を見ることができるか)を前もって子どもたちに伝え、勝敗を決めます。
 このバトルは子どもたちにすごい人気があります。ある女の子は、1週間も前から「ママ、来週はダンスバトルなんだよー!」と家で話すほどだそうです。勝負事となると、子どもたちの目の色が変わります。普段は口数が少なく、控えめな性格の子も、勢いよく踊るほどです。勝ったチームは当然のことながらもろ手を挙げて大喜びしますが、負けたチームはひどくしょんぼりします。
 私はそんな彼らに「くそー! 次は負けないぞー!」と言わせるようにしています。この言葉は、ある結果に対して悔しいと思う感情から出てきます。
 悔しさは、負けた事実を自分のこととして受け止めて初めて湧く感情であり、自分が成長するためのエネルギーになります。現時点では私のまねをして「くそー!」と叫ぶだけかもしれません。
 しかし、言葉にすれば感情が伴ってくるものです。そうして習慣づけることができれば、子どもたちの近い将来に役立つものになると考えています。学校のテストで悪い点数を取ったとき、友達にばかにされたとき、人前で恥を書いたとき、心が折れそうなときに、どん底から這(は)い上がるための原動力になるのです。
(伊狩誓志、ストリートダンス講師)