コラム「南風」 正月笑いは健康長寿


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 終戦70年目の新春を迎え平和で穏やかな「正月笑(しょうぐゎちわれー)」で一人一人が健康長寿の一年間を過ごされることを祈る。

 私は名護市(旧久志村)で少年期を過ごした。太平洋と真白な砂浜を目の前にし、後方には緑が生い茂る小高い山が連なったのどかな少年時代であった。明治30年生まれの祖父母は「正月笑いは良いことがたくさんあるよ…」とよく話していた。いつの間にかその言葉が身についた。正月になると各家々から笑い声が聞こえてきた、「若年からとぅりよ(身も心も若返る様にしなさいよ)」と年配の人は言っていた。
 沖縄には笑いに関する数多くの表現がある。例えば「目小笑い(目をほそめて笑う)」「高笑い(大声で笑う)」「泣き笑い(嬉(うれ)しさのあまり涙が出るほど笑う)」等々。そして周りの仲間はおなかを抱えて笑い出しその場の雰囲気を楽しんでいた。笑いは健康の秘訣(ひけつ)といわれているので地域ごとに埋もれている面白い笑い話を掘り起こし新しい笑いの文化を継承する試みも素晴らしいことであろう。現在では笑い声が地域社会で聞こえなくなり家庭内でも笑い声が聞こえなくなりつつある。沖縄の黄金言葉に「銭とぅ笑らん子とぅど笑りる」とある。
 しかし、少子高齢時代とあって巷(ちまた)では子どもたちの話し声さえ聞こえない地域もあると言う。昔は子どもたちは場所にそれほど左右されずに笑いながら遊びふけっていた。物質的には豊かでなかったが、大人も子どもも裸の付き合いをして面白おかしく笑って明るい健康な暮らしをしていた。つまり笑いと健康は一本のひものようなものである。豊かさの中に心の喜びと笑いが影を潜めてしまった。長寿県トップだった沖縄、現在はそれがランク落ちした。健康長寿沖縄の回復を目指して「正月笑い」を楽しみたいものである。
(座間味宗治、沖縄語普及協議会副会長・臨床心理士)