コラム「南風」 美と霊力のお米


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今年も新米の季節がやってきた。黄金色の稲穂が頭を垂れているのを見ると、なんだか無性に胸が躍る。
 自分でもお米が作りたくなって、昔はお米の産地だった宜野湾市大山で田芋農家さんにお願いし、田植えに挑戦。西表島から種籾(もみ)を分けてもらい、苗床を作り、仲間と昔ながらの手植えをしたが、スズメの襲来とカメムシにやられ、3回とも籾の中は空っぽというありさまだった。

これが専業農家ならおまんま食い上げだ。頭では分かってはいたけれど農業はなんてハイリスクな職業なんだろうと、実らないことの恐ろしさを実感した。
 ましてや沖縄は台風銀座である。ここ数年は異常気象による農作物の被害も増えた。このリスクを消費者も何らかの形で分担すべきなのではと私は思う。せめて草刈りや収穫の手伝いだけでもいい。みんなが援農したくなるような仕組みが作れたらと思っている。
 西表島の米農家、那良伊孫一さんは地球環境を守るため、30年間、無農薬・無化学肥料で「安心米」を栽培している。昨年は100年に一度と言われる大干ばつを乗り越え、浮島ガーデンにもたくさん卸してくださった。安心米は原種に近いからか、生命力が尋常でない。収穫後、腋(わき)目から穂が出て、もう一度収穫できたり、1本植えをすると40本近くも分けつするそうだ。お米は一粒万倍、一粒から千粒も稔(みの)るエネルギーの塊。浮島ガーデンのスタッフも安心米のおかげですこぶる元気だ。
 かつて琉球ではお米には霊力があると信じられ、王府はお米のエキスともいえる泡盛を首里城正殿下に敷き詰め、力を得ていたそうだ。医学的にもお米の力は証明されている。琉球大学の益崎裕章教授は、玄米が肥満解消や糖尿病に効くことを明らかにした。
 お米で美と霊力を存分に高めていただきたい。
(中曽根直子、風土コーディネーター)