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後続着陸機との交信認識か 海保機、離陸急いだ可能性 羽田衝突事故


後続着陸機との交信認識か 海保機、離陸急いだ可能性 羽田衝突事故 海保機の動き(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 羽田空港で海上保安庁と日航の航空機が衝突した事故で、管制官が日航機の後に続く着陸機に「出発機あり」と伝えて減速を指示した交信内容を、海保機のパイロットが聞いていた可能性があることが10日、関係者への取材で分かった。「出発機」は海保機を指し、日航機の存在に気付いていない海保機が減速した後続機の着陸前に急いで離陸しようとした恐れがある。運輸安全委員会などが経緯を調べる。

 海保機が事故直前に管制官から待機を指示されたC滑走路手前の路面には、停止が必要なことを赤い光で知らせる「ストップバーライト(停止線灯)」が設置されていなかったことも国土交通省への取材で分かった。設置は義務ではなく、悪天候時などに使われる約15メートル手前の停止線には整備済みだった。誤進入の予防に効果的との指摘もあり、国交省が整備や活用の可否を検討する。

 交信記録によると、管制官は日航機の着陸を許可した直後の2日午後5時45分から海保機とやりとりを始めた。能登半島地震の災害支援に向かう海保機に離陸順が最優先であることを示す「ナンバー1(1番目)」と伝え、滑走路手前の停止位置まで地上走行するよう指示。その後、日航機の後に着陸する航空機に「出発機あり。減速してください」と呼びかけた。

 海保機は「ナンバー1」と言われたことに加え、着陸許可が出ていた日航機の存在を認識していなかったため、その後の後続着陸機の交信を聞いて優先的に離陸できると誤認した可能性がある。

 関係者によると、海保機は羽田航空基地の格納庫を午後4時45分ごろ出発する計画だった。誘導路を走行してC滑走路に進入し、衝突したのは同5時47分ごろ。直線距離で4キロ程度あり、AとBの二つの滑走路を横切る必要がある。年始の夕方で混雑していた。

 航空関係者からは、時間に追われるあまり正常な判断ができず、自らに都合の良いように解釈して行動する「ハリーアップ症候群」の影響を指摘する声も出ている。

(共同通信)