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壮大な世界観に没入 少年の大成描く巨大絵巻<キングダム展 沖縄へ―その魅力に迫る>1


壮大な世界観に没入 少年の大成描く巨大絵巻<キングダム展 沖縄へ―その魅力に迫る>1 第171話「将軍の景色」(C)原泰久/集英社
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 人気漫画「キングダム」の原画などを展示する「キングダム展―信―沖縄会場」(主催・沖縄美ら島財団、琉球新報社、宣伝)が、22日から那覇市の県立博物館・美術館で開催される。関係者らの寄稿を通して、アニメや実写映画も大ヒットを続け、コミックス発行部数が累計1億部を超える「キングダム」の人気の理由やストーリーを紹介し、その魅力に迫る。

 2006年から連載が始まった本作は、およそ2200年前の紀元前240年頃、戦国七雄(秦・韓・魏・趙・燕・斉・楚)が天下を争う大乱世の中国を、歴史上はじめて統一することとなる「秦の始皇帝」嬴政(えいせい)と将軍・李信(りしん)を中心に描く史実を基にしたアクション歴史巨編である。

 これまであまり描かれなかった三国志以前の「春秋戦国時代」という、混沌(こんとん)とした戦乱の世界にどれだけ没入して想像を膨らませたのであろうかと言える臨場感。そして小さな村の奴隷のような身分だった少年がいくつもの苦境を乗り越えながら大成していく様を、まるで巨大な絵巻物のように創造している。もちろんそこには膨大で綿密な取材があったことは言うまでもない。「秦の始皇帝」という名は広く知られているが、七つもの国が領土を巡り戦いを続けていたその時代の人物や物語を知る人はそう多くないだろう。本作は歴史上実在した登場キャラクターがいずれも個性豊かで、主人公の信(しん)(後の李信)と嬴政だけでなく、仲間や好敵手が戦いそして生きる思いと背景をこれでもかというほど濃厚に描写しているのだ。

第1話「無名の少年」(C)原泰久/集英社

 本作が長く愛される大きな理由は、まさに作者・原泰久氏の「想像力」と「創造力」から描かれる没入してしまう世界観と物語の壮大さにある。物語は戦国七雄の一つ「秦国」の小さな村から始まる。身寄りのない少年・信と漂(ひょう)は、いつか武功をあげて天下の大将軍になることを夢見て鍛錬を積んでいた。そんな2人が偶然、秦国の大臣に出会ったことから運命の歯車が動き出す。ある日、王宮に仕えることになった漂が反乱に巻き込まれ深い傷を負って村に戻る。そして漂は死の間際、「俺を天下に連れて行ってくれ」と信に遺言を託す。思いを受け取った信が走り続けた先には漂とうり二つの少年が待っていた。少年は後の始皇帝であり第31代秦王になる嬴政であった。その後、信と嬴政は屈強な敵と対峙(たいじ)するも、仲間と共に王弟の反乱を収める。

 信は初陣で武功をあげ「飛信隊」を結成する。そして戦場での出会いや別れを繰り返し糧にしながら、隊長として人として大きく成長を遂げていく。王騎(おうき)、麃公(ひょうこう)など秦国を代表する大将軍や、戦場を共にした仲間たち、そして相対した好敵手たちの思いを背負いながら戦い続ける信の姿は、多くの者たちに影響を与えていく。「中華統一」を目指す嬴政と共に、自身と亡き親友の夢「天下の大将軍」になるために、信たちの物語は続いていく。

 本展は、キングダム連載開始15周年を記念し、東京会場の「上野の森美術館」を皮切りに全国を巡回している。原泰久氏全面監修のもと、主人公・信の物語を再構築。400点以上の直筆生原画や、本展のために描きおろされたイラストを展示し、感動の名場面を生原稿と巨大グラフィックで再構成してお届けする、これまでにない規模の原画展となっている。沖縄県立美術館・博物館が最終の地だ。キングダムファンはもちろんのこと、原作をあまり知らない方も信の物語を一から楽しんでいただきたい。


 根林芳充(ねばやし・よしみつ) 宣伝コンテンツチームプロデューサー。アニメやキャラクターを中心にマーチャンダイズ・イベントなどを手がけている。


22日からキングダム展 県立博物館・美術館

 「キングダム展―信―沖縄会場」は22日から5月12日まで。当日券は一般1500円、高校・大学生千円、小・中学生500円。前売り券は3月31日までファミリーマートで販売。問い合わせは県立博物館・美術館、電話098(941)8200。