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東京行動で呼びかけ 島々だけではない要塞化<全国に広がる戦争準備>下 藤井幸子


東京行動で呼びかけ 島々だけではない要塞化<全国に広がる戦争準備>下 藤井幸子 9地域10の団体が報告した「全国を戦場にさせない! 東京行動」の院内集会=6月27日、東京都の衆議院第一議員会館
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 私たち南西地域の島々―馬毛島、奄美大島、沖縄島、宮古島、与那国島、石垣島のメンバーは、3月23・24日「島々を戦場にさせない!全国がつながろうin石垣島」を取り組み、去る6月27日、「島々から呼びかける全国を戦場にさせない!東京行動」(主催・南西地域の島々と大分敷戸、福岡築城、京都祝園など9地域10団体による実行委員会)を開催した。会場には100人を超える参加者が集まりZoomで65カ所をつないだ集会と政府要請となった。

 なぜ、「東京行動」を起こしたのか。安保3文書改訂後の南西地域での軍事要塞化が急速に進み島々の暮らしを脅かしているからだ。

日米共同訓練

 馬毛島では昨年から新たな自衛隊基地建設が住民の暮らしや地域経済を破壊しながら強行されている。奄美大島では、2019年に駐屯地が開設され、基地の拡大、弾薬庫建設、オスプレイの市街地上空飛行が続いている。うるま市勝連では3月に新たなミサイル連隊が配備され、19年開設された宮古島には、射撃訓練場や弾薬庫が建設され、新たに電子戦部隊が配備予定だ。

 与那国島には、16年沿岸監視部隊が、今年3月電子戦部隊が配備され、今後、駐屯地が1・6倍に拡張され、射撃場や弾薬庫が新たに整備、地対空ミサイル部隊の配備も計画されている。

 石垣島では、戦後78年間基地のなかった島に昨年3月、駐屯地が開設されミサイル部隊が配備された。開設後は、PAC3配備、米掃海艦の入港、日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」と続き、今年に入っても、米駆逐艦の入港、駐日米大使や在沖米軍トップが与那国、石垣を軍用機で来島、駐屯地等を視察し、訓練場が拡大され1・5倍に、さらなる拡張の動きもある。

 東京行動後は、7月28日から8月7日まで、「レゾリュート・ドラゴン24」が九州の各地、石垣、与那国、宮古、うるま市勝連で住民の反対を無視して実施されている。来年度には中国にも届く長射程ミサイルの配備も検討されている。

 「東京行動」は、これらの日米一体の軍事要塞化は島々の問題だけでなく、全国の問題であり、全国がつながって止めようと呼びかけるものだ。

 政府は、台湾有事、対中国を念頭に、2023年から5年間で43兆円もの大軍拡を進め、世界第3位の軍事大国にしようとしている。35年までに全国で弾薬庫を約130棟整備するとし、全国283地区で自衛隊基地司令部の地下化や強靭化、住民監視や私権制限を含む重要土地規制法指定など「戦争準備」を進めている。

「台湾有事」

 防衛費以外からも、軍拡を進めようとしている。民間空港・港湾の「特定利用(重要拠点)」指定だ。4月1日、防衛力の強化に向けて、自衛隊や海上保安庁が訓練などで円滑に使えるように整備・拡充する「特定利用空港・港湾」に、全国の16カ所の空港と港が指定され、沖縄県では石垣空港と那覇空港が指定された。石垣市長は、「日米地位協定で米軍の港湾利用は可能だ。特定港湾・空港に指定されていなくても攻撃対象になる事に関して差はない、指定にデメリットはない。市民に対しての説明や合意形成は必要ない」とコメントしている。与那国町長は、環境省の「日本の重要湿地500」に選定され、琉球列島最大規模の湿地帯である樽舞湿原を掘削する港湾計画を「特定利用港湾」として整備することや与那国空港の指定を積極的に政府に求めている。

 さらに、6月19日、地方自治法の一部改正法が成立した。改正法には、感染症の大流行や大規模災害など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合、個別の法律に規定がなくても国が自治体に必要な指示ができる特例が盛り込まれた。国の指示が適切だったか検証する必要があるとして、国会への事後報告を義務づける規定を設ける修正が行われたが、発動の要件が極めてあいまいで、自治体への国の不当な介入の誘発や、将来拡大解釈されるおそれもあると野党は指摘している。

 このような大軍拡、戦争準備の背景にあるのが、アメリカの対中国戦略、「台湾有事」だ。

 では、「台湾有事」は本当に起こるのか。日本政府も米国政府も台湾と中国の関係は、中国の国内問題であると認めている。米中の経済関係を見れば、アメリカは、中国との全面戦争は望んでいないし、中国も望んでいない。しかし、アメリカは「中国が台湾に侵攻したら軍事的に対応する」と繰り返し主張している。もし、「台湾有事」に「日本有事」として参戦すれば、中国は南西諸島、九州だけを限定攻撃するとは限らない。補給地・補給路をたたくのは、軍事の常識だ。全国各地の軍事施設や特定利用空港・港湾は攻撃対象になる。ウクライナやガザを見ても軍事施設だけでなく民間人や住宅、病院、学校、ダムなども攻撃されるというのが戦争の実態だ。

 全国各地で進む弾薬庫の増設・新設、自衛隊基地の強靭化は、戦場になるリスクを全国に広げている。戦時体制として権利制限できるような重要土地規正法、地方自治法改正や憲法改正、大軍拡予算は全国民の問題だ。今必要なのは、「台湾有事」を起こさせない、「台湾有事」を「日本有事」にさせないことだ。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々は、年に千回以上も話し合いをして、紛争を戦争にしない平和の枠組みを作り上げている。

 私は、首相官邸前で「みなさんの住んでいる隣に弾薬庫ができたら黙っていますか?―中略―南西地域の島々だけではなく全国各地が戦場になるんですよ」と呼びかけた。全国がつながって、「戦争準備」を止めようではないか。

藤井 幸子 ふじい・さちこ

 1947年大阪生まれ。2005年に石垣島に移住。07年に島の女性たちと「いしがき女性9条の会」を設立、現在事務局長。石垣島の平和と自然を守る市民連絡会事務局長。

11日、意見交換会

 日米が煽る台湾有事NO!「沖縄・九州・西日本から全国に広がる戦争準備」報告意見交換会は8月11日(日)午後2時から沖縄市民会館中ホールで開催する。石垣、うるま、大分、広島、京都から報告。戦争準備を止める「共同行動」を話し合う。資料代500円。問い合わせは、090(2716)6686、「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」会事務局。