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旅行業の本質見詰める 宮里政欣さんを悼む 宮里一郎(沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長)


旅行業の本質見詰める 宮里政欣さんを悼む 宮里一郎(沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

訃報を聞いて驚いた。政欣さんは私より20歳ほど年上で、大先輩にあたるが、誰にでもフレンドリーで皆に愛される人だった。政欣さんが沖縄ツーリスト(OTS)で現役だった頃からいろんな話をしていた。同じやんばる出身ということでも親近感があり、沖縄の観光人としてとても尊敬している。
 旅行業というよりも、沖縄観光を全体的に大きなくくりで捉え、俯瞰(ふかん)して物事を見ている人だった。ホテル業以外のことでも情報交換させていただき、非常に勉強になった。旅行業の成り立ちを知る沖縄観光の先駆者であるにもかかわらず、余り多くは語らず、控えめな方だった。しかし、一つ一つの言葉に意味を持ち、目や話し方に強い芯を感じる人だった。
 1975年の沖縄国際海洋博覧会に向かい、ホテルやショッピングモールを作ろうという動きがあった。政欣さんは「目前の半年間だけでなく、より先を見据えて考えるべきだ」と話していた。結果的に海洋博終了後に多くの施設が廃業した。沖縄観光を長い目で見ていたからこそ、先見の明があったのだろう。
 海洋博を機に、多くの県外、海外企業が流入した。成功している大きな会社を見て勉強になる反面、沖縄の企業としてのプライドもあった。その時も政欣さんは、一時的なものに飛びつくのではなく、吟味して判断しなくてはならないと、沖縄の心を説いていた。きっと「沖縄人としてのプライドを持たないと、波に飲み込まれ立ち位置が不安定になってしまう」と思っていたのではないか。旅行業の本質をいつも見詰めていた方だった。
 (県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長)