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新規上場数、伸び悩み 東証 新興企業に投資回らず


新規上場数、伸び悩み 東証 新興企業に投資回らず 新規株式公開(IPO)の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東京株式市場では今年、日経平均株価がバブル経済崩壊後の最高値を付け、投資環境の良好さが際立った一方、証券取引所へ新規上場する企業数は伸び悩んでいる。投資資金が上位市場や特定の業界に優先的に振り向けられ、成長市場にある新興企業に十分に回っていないことが背景にある。
 上場すれば資金調達の機会が広がるなどの利点がある。ただ上場企業の本社は東京に集中しており、東京証券取引所は地方からの上場を後押ししている。
 SMBC日興証券の調査では、機関投資家などプロ向けの東京プロマーケットを除き、今年1~9月の新規株式公開(IPO)は楽天銀行など66件で、前年同期比で14件増えた。ただ10~12月でさほど伸びず、通年では前年と同水準の90件程度と見込む。リーマン・ショック直後の2009年以降では、21年の125件が最多だ。
 平均株価は東証最上位市場「プライム」に上場するトヨタ自動車や資生堂など代表的な銘柄で構成。東証が今年3月末、上場企業に企業価値の向上策を開示するよう要請したことも追い風に将来的な株高が期待され、6月には約33年ぶりに3万3000円台を付けた。
 一方、新規上場企業の大半が選ぶ新興企業向けの「グロース」市場の値動きを示す指数は、日経平均株価と比べると見劣りする。「プライムの割安株や、製品需要の強い半導体関連株に資金が流れ、新規上場する新興企業に投資が向かいづらい環境だ」(日興の第一プライベート・コーポレート・アドバイザリー部の斉藤宗一郎部長)
 米国の長期金利が高止まりしていることも成長企業の重荷で、上場承認後に中止を決めた企業は今年1~9月で7件(22年は年間9件)あり、うち4件は力強さに欠ける新興市場などの動向が理由だった。投資家の需要が集まらないとの不安から、経営者が上場するかどうかを公表直前まで悩むケースも多いという。