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企業「金利・中東」警戒も 訪日客回復 資源高は一服


企業「金利・中東」警戒も 訪日客回復 資源高は一服 経営者の主な発言
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 上場企業の2023年9月中間決算は、円安進行やインバウンド(訪日客)回復を背景に総じて好調だった。経営者からは業績を評価する発言が相次いだ一方、国内金利の上昇や中東情勢に警戒感も出ていた。
 「堅調な販売に円安の増益効果が加わった」。純利益が前年同期からほぼ2倍になったSUBARU(スバル)の大崎篤社長は説明した。半導体不足が和らぎ生産も回復した。自動車産業は今回の企業決算全体のけん引役となった。
 ドルやユーロなど外貨を持つ訪日客にとっては、円安が進むほど日本で売られる製品は安く映る。「円安の影響で訪日客の旅行需要は伸びている。広島や京都、姫路などを訪問する旅行者が多い」と話すのはJR西日本の坪根英慈取締役。訪日客が京都と大阪という定番コースから足を延ばしていることがうかがえる。新幹線の運輸収入は新型コロナウイルス禍前の19年比で91・1%まで回復した。
 ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源や原材料の高騰には一服感がみられる。大手電力会社では火力発電に使う燃料費負担が減ったのに加え、電気料金の値上げも寄与して最高益更新が相次いだ。
 純損益が黒字転換した日清製粉グループ本社の鈴木栄一取締役は「小麦などの穀物相場が徐々に落ち着き、事業環境は好転の兆しが見えてきている」と話す。
 好業績を受け、期待が高まるのが24年春闘での賃上げだ。
 キッコーマンの中野祥三郎社長は「賃上げは経済のサイクルへの貢献で、次の春も検討中」と前向きな姿勢を示した。
 一方、金利上昇には身構える姿勢がみられた。長期金利は11月、一時約10年5カ月ぶりの高水準となる0・970%を付けた。
 東急不動産ホールディングスの宇杉真一郎取締役は「おおむね1・5%くらいまで上がることを見込んで中期の計画を立てている」と述べた。
 日銀の政策修正により将来は短期金利が上昇する可能性にも触れ「住宅ローンにも一定の影響が出るので、そこは注視していく必要がある」と語った。
 中国の景気低迷も影を落とす。オムロンは純利益が78・2%減となり、通期見通しも大幅に引き下げた。中国で設備投資需要が想定より減り「大手顧客の半導体や蓄電池の投資が延期された」(辻永順太社長)という。
 日本製鉄も中国の不動産不況の長期化を受け、下半期の経営環境は厳しいと見込む。
 日立製作所の河村芳彦副社長は、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘激化が原油高騰を招き「個別企業の業績に影響が出ることを心配している」と述べた。