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閉校プールで海ブドウ 静岡業者が養殖 「鮮度、沖縄と一緒」


閉校プールで海ブドウ 静岡業者が養殖 「鮮度、沖縄と一緒」 閉校した小学校のプール跡で海ブドウの養殖を行う「しずおか海ぶどうLABO」の庄司昌弘場長=6日、静岡県沼津市
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 静岡県沼津市の閉校した小学校のプールで、プチプチとした食感が特色の海ブドウが養殖されている。沖縄県で事業を手がける企業が2022年10月から始めた。市内飲食店などに出荷し、評判は上々。関係者は「新鮮な海ブドウが身近に食べられるようになれば」と意気込む。
 「しずおか海ぶどうLABO」と名付けられた養殖場は、21年3月末で閉校した市立内浦小跡地内にある。25メートルプールの中に14基の水槽を設置し、プール全体をビニールハウスで覆って温度や光を調整。水槽では、見た目やほどよい塩気から「グリーンキャビア」とも呼ばれる海ブドウが揺らめいていた。
 宮古島市で18年から海ブドウを養殖している「Rカンパニー」(静岡県長泉町)が始めた。かつて宮古島市で生育したものを空輸していたが、鮮度が落ちてしまう難点があり、解消策として思い付いたのが県内養殖だ。永井良太社長(39)は「海ブドウ本来のおいしさを静岡で広めたい」と意欲をにじませる。
 海ブドウの養殖には、十分な日当たりと、大量の海水を採取しやすい環境が不可欠。数百メートル先に内浦港があるプール跡は条件に適していた。沼津市が学校跡地の活用先を探していることを知った同社は、22年4月、賃貸借契約を締結。同10月には水槽に張った網への種苗の植え付けを始めた。
 22年中に出荷できると見越していたが、養殖が盛んな宮古島とは海水の塩分濃度や気候が大きく異なるため、沼津の環境に適した生育方法の確立には四苦八苦した。想定より高い気温が続いたために大量発生した藻が枝に絡まり、出荷できなくなってしまうことも。
 水温管理や酸素供給の方法に工夫を重ね、初出荷にこぎつけたのは今年8月。その後、月間約200キロを収穫し、地元飲食店やスーパーマーケットなどに出荷していて「鮮度も味も沖縄のものと変わらない」と好評だ。
 粒の大きさが安定しないことが現在の課題で、庄司昌弘場長(42)は「宮古島のように安定して生産できるようにしたい」と試行錯誤を続ける。