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アルトマン氏解任騒動 社員反発、復帰を要求 米オープンAI ガバナンス問題を露呈  


アルトマン氏解任騒動 社員反発、復帰を要求 米オープンAI ガバナンス問題を露呈   サム・アルトマン氏=6日(ゲッティ=共同)
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 対話型人工知能(AI)「チャットGPT」開発の米新興企業オープンAIの最高経営責任者(CEO)を突如解任されたサム・アルトマン氏が元のさやに収まることになった。約9割の社員によるCEO復帰要求が決定打となった。解任騒動は開発やビジネスの進め方を巡る取締役会の路線対立が背景とされる。今回の混乱劇は、オープンAIのガバナンス(企業統治)問題を露呈した。
 「アルトマン氏が新しい取締役会とともにCEOとして復帰することで基本合意した」。17日の解任発表に端を発した内紛は米西部時間21日夜、アルトマン氏の勝利で終わった。
 オープンAIの取締役会は17日、声明文で「アルトマン氏はコミュニケーションに一貫して率直ではない」と指摘したものの、何が問題だったのかは判然とせず社員も反発。米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版によると、解任に納得しない社員が翌18日、アルトマン氏の自宅に集結し、復帰の“作戦”を練った。
緊張関係
 オープンAIは2015年に「人類の利益のために安全で有益なAIを開発する」ことを目的に非営利法人として設立された。複数の法人で構成され、非営利法人が営利企業の活動全般を統治し、監視するという珍しい仕組みとなっている。
 米メディアによると、アルトマン氏追放に動いた取締役の一部は非営利法人の設立趣旨に沿って慎重なAI開発を求めていた。開発と普及のスピードを重視するアルトマン氏とかねて緊張関係にあったとされる。
 オープンAIがX(旧ツイッター)で明らかにした新しい取締役会のメンバーは、米セールスフォース・ドットコム元CEOのブレット・テイラー氏や、ラリー・サマーズ元米財務長官ら。アルトマン氏と対立していた米ジョージタウン大のヘレン・トナー氏らの名前はなかった。 
 混乱の中で存在感を発揮したのがオープンAIに出資している米マイクロソフト(MS)のサティア・ナデラCEOだ。アルトマン氏の解任が明らかになるとMSに迎え入れると表明。一方で、オープンAIとの協業を続ける方針も示し「漁夫の利」を得ているとの見方も出ていた。
MSの影響力
 アルトマン氏は「新取締役会とサティア氏の支援で、オープンAIに戻ってMSと強力な協力関係を築ける」と投稿。オープンAIの新取締役会も親アルトマン派が多くなる見込みで、MSは影響力を行使しやすくなりそうだ。
 MSは生成AIを巡って米グーグルなどと激しく競争しており、業務支援ソフト「オフィス」などにチャットGPTの技術搭載を進めている。MSとオープンAIの一体化が進む可能性がある。
 (ニューヨーク共同=隈本友祐)