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「稼ぐまち」で地域活性化 公民連携のノウハウ学べ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岩手県紫波町の複合施設「オガール」には、飲食店や物販店、ホテル、クリニック、図書館、町役場などが集まり、年間100万人が足を運ぶ。公民連携事業だが、補助金に頼らずに運営し、利益を出している。雇用が生まれ、農作物を売る農家の所得は向上し、地価も上昇した。多くの人を引きつける「稼ぐまち」を創出することは、地域活性化の特効薬になる。
 オガールは2012年に中核施設をオープンしたが、利益を出すために着工前に全てのテナントを固め、建設コストの削減にも力を入れた。
 建物は鉄筋コンクリートよりも耐用年数が短い木造にし、減価償却費を多く計上して手元資金を厚くした。建築部材をそのまま使う設計とし、加工の手間も省いた。費用のかさむ壁紙は使わず塗装した。木質バイオマスボイラーによる熱供給で光熱費も節約している。
 オガールは事業収益を担保とする「プロジェクトファイナンス(事業性融資)」で東北銀行(盛岡市)から20億円超を調達した。オガールの岡崎正信社長は「公金・補助金頼みの場合、どうしても採算管理が甘くなりがちだ」と話す。
 オガールでノウハウを学び、大阪府大東市で地域活性化に挑んでいる人もいる。大東市と民間企業から出資を受け、公民連携事業を手がける「コーミン」の入江智子社長だ。老朽化した市営団地を21年にシックな住宅と商業施設で構成するエリアに生まれ変わらせた。
 一帯にはおしゃれな集合住宅や公園のほか、オフィスやレストラン、アウトドアショップ、ベーカリーなどが集積し、多くの人が行き交う。
 このプロジェクトも行政からの補助金がなくても収支が安定するような事業計画を立てており、枚方信用金庫(大阪府枚方市)から10億3千万円の融資を受けた。
 コーミンと大東市が共同出資する建設主体の特定目的会社(SPC)は取引口座の通帳を信金に預け、必要経費を引き出す際は使途などを説明して信頼関係を築いたという。
 ただ、公民連携事業も成功事例ばかりではない。地元のにぎわいを目指して融資し、長く事業に並走する金融機関には、オガールやコーミンのプロジェクトが蓄積してきた「稼ぐまちづくり」のノウハウを学んでもらいたい。(共同通信編集委員・橋本卓典)