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賃上げ月平均9437円 厚労省調査 増加率3.2%、過去最大 実質賃金マイナス続く


賃上げ月平均9437円 厚労省調査 増加率3.2%、過去最大 実質賃金マイナス続く 平均賃上げ率と賃上げ額の推移
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 厚生労働省が28日発表した2023年の賃金引き上げ実態調査によると、基本給など月額所定内賃金の全産業の平均引き上げ額は、前年より3903円高い9437円だった。増加率は3・2%で、いずれも比較可能な1999年以降で過去最大となった。今年7~8月に調査し、有効回答があった従業員100人以上の1901社を集計した。

 厚労省によると、新型コロナウイルス禍からの経済回復が押し上げ要因となった。ただ同省の毎月勤労統計調査では、物価の変動を加味した実質賃金が今年9月まで18カ月連続マイナスで、家計の苦しい状況が続く。
 物価高騰の中で働き手確保のため賃上げを迫られた企業も多かったとみられ、年内に賃上げを実施、または予定する企業は前年から3・4ポイント増の89・1%だった。増加は2年連続。
 業種別で割合が高いのは建設業(99・7%)、製造業(97・4%)など。一方で運輸業・郵便業は71・0%、宿泊・飲食サービス業も77・4%にとどまった。
 勤続年数や年齢に応じた定期昇給制度がある企業のうち、一般職員の賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)を実施、または予定している企業の割合は49・5%。前年より19・6ポイント伸びた。
 賃金改定で最も重視したのは「企業の業績」が最多の36・0%だったが、前年より4・0ポイント減。増加したのは「労働力の確保・定着」(16・1%)「雇用の維持」(11・6%)で、「物価の動向」も前年から6・6ポイント上昇して7・9%だった。
 武見敬三厚労相はこの日の記者会見で「中小企業が賃上げしやすい環境の整備が重要だ」と強調。リスキリング(学び直し)による能力向上などを推進するとした。

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<用語>賃上げ

 企業が賃金を引き上げること。年齢や勤務年数に応じて賃金が増加する「定期昇給(定昇)」と、賃金水準を一律に底上げする「ベースアップ(ベア)」に大別される。岸田文雄首相は、企業の収益を賃上げで労働者に分配し、さらなる経済成長につなげる「成長と分配の好循環」を掲げる。だが、物価変動を加味した実質賃金はマイナス状態が続いており、物価高騰に賃金の伸びが追い付いていない。
(共同通信)