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再稼働時期は依然不透明 トラブル続出、地元同意も前提


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発に対する事実上の運転禁止命令解除を年内にも判断する見通しを示した。東電のずさんな体質に突き付けられた異例の命令から約2年半。東電はハード、ソフト両面の改善を強調し、規制委も評価を示すが、この間もトラブルは続発している。東電経営再建の鍵を握る再稼働時期は依然として不透明なままだ。
 「社長の責任は極めて重いものだし、社長のマネジメントが非常に重要になる」。規制委の山中伸介委員長は6日の定例会合で、改めて東電の小早川智明社長の考えを直接ただす意向を示した。
 規制委が命令を出したのは2021年4月。運転員が同僚のIDカードで中央制御室に入ったほか、侵入検知設備が適切に保守・点検されず、最長約11カ月放置された事態を重く見た。命令の期間は「自律的な改善が見込める状態になるまで」と期限を設けなかった。
 事務局の原子力規制庁は延べ4268時間に及ぶ追加検査を実施。社員同士で注意し合うなど、安全を生み出そうとする職場環境がつくれているかどうか継続的に観察した結果、当初想定した倍以上の時間がかかった。
 しかし追加検査中もお粗末な事案が繰り返し起きた。22年6月にはテロ対策に必要な照明の一部が停電した場合、人の侵入を感知できる明るさを確保できなくなっていたことが発覚した。今年1月には核燃料を扱う「防護区域」に社員が無許可でスマートフォンを持ち込んだ。
 報告書案公表を控えた10月には抜き打ち薬物検査で社員の陽性反応を見落とし、防護区域に入れていた。新潟県警や医療機関での検査では陰性で、偽陽性だったとみられるが、マニュアルが守られていなかった。
 今後、山中委員長らの現地視察や、委員会と東電の小早川社長との面談で新たな問題が発覚せず、運転禁止命令が解除されたとしても、再稼働には地元同意という大きな壁がある。
 新潟県は9月、福島第1原発事故に関する独自の検証結果を公表。住民避難や健康影響などをテーマとし、柏崎刈羽原発の再稼働議論の前提となる。花角英世知事は県民の意見を聞く場を設ける方針だが、自身の意見を問われても「結論はない」とかわすだけだった。