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金融緩和の出口示唆/日銀 変動抑える「地ならし」か


金融緩和の出口示唆/日銀 変動抑える「地ならし」か 日銀政策委員の緩和策出口に関する主な発言(写真なし)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日銀の植田和男総裁は7日の参院財政金融委員会で、大規模な金融緩和策の運営を巡り「年末から来年にかけて一段とチャレンジング(挑戦的)な状況になると思っている」と述べた。他の政策委員からもこのところ、金融緩和の「出口」が近いことを示唆するような発言が相次いだ。市場では、相場の急激な変動を抑える「地ならし」との見方が広がっている。
 植田氏は、2%の物価安定目標の実現が見通せるようになれば「マイナス金利解除、長短金利操作の撤廃の可能性を検討する」と説明。「賃上げの動きが今後も継続し、個人消費を支えていけるかどうかが非常に重要なポイント」と強調した。
 賃金と物価がそろって上昇する好循環が鍵で、安達誠司審議委員は11月29日の記者会見で「ようやく回り始めているかもしれない」と分析。氷見野良三副総裁は12月6日の講演で「出口を良い結果につなげることは十分可能」と語った。一連の発言について、ある日銀幹部は「政策変更をサプライズでやるわけにはいかない」と解説する。
 マイナス金利の解除は利上げに当たり、市中金利の水準は上昇する可能性が高い。企業の借り入れや住宅ローンの金利上昇につながる。
 こうした負担増への懸念に対し、氷見野氏は出口に至れば「メリットは幅広い家計と企業に及ぶ」と指摘した。預金金利が上昇すれば家計の収支は改善が見込める。企業は借金を減らして手元資金を積み上げてきており、影響は限定的と考えられるのが理由だ。
 日銀は金融政策決定会合を12月18、19日に開催する。来年は1月と3月、4月に開く予定だ。マイナス金利の解除には「まだ時間がかかる」(中村豊明審議委員)と慎重な意見もあるが、日銀が思い描く賃上げ水準になることが見込めれば、異例の政策を正常化する重大局面となりそうだ。