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ルール世界標準化 狙う


ルール世界標準化 狙う 人工知能(AI)への主な対応
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 欧州連合(EU)は9日、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」など生成AIを含む包括的なAI規制法案に合意した。いち早くAIの悪用を防ぐための法制化に向けた道筋をつけ、米国や中国などが展開する規制を巡る主導権争いで一歩リードした格好だ。EUのルールが世界の標準となる「ブリュッセル効果」を生む狙いもある。

生みの苦しみ
 「マラソン協議だ」。全加盟国で構成する理事会と欧州議会、行政執行機関の欧州委員会による大詰めの3者協議は難航を極めた。生成AIの規制や当局による生体認証の使用制限を巡り理事会と議会が対立。当初は6、7日の2日間で終える予定が、20時間以上議論しても決着がつかず3日目に突入。合意の発表は9日未明だった。
 今後の政治日程から3者は法案の年内合意にこだわった。EUは来年6月に欧州議会選を控え、選挙後には欧州委員会トップの欧州委員長やEUを国際的に代表する大統領が新しく選ばれる。
 法案は3者が合意した上で、欧州議会と理事会でそれぞれ正式に承認する必要がある。協議が年明けまでずれ込めば欧州政界は選挙モードに突入し、法案を成立させるための時間は限られる。選挙までに決着がつかなければ、成立が見通せなくなる。
 欧州議会の交渉担当者は合意後「EUはこれまで世界に素晴らしい貢献をしてきた」と国際規範形成における欧州の実績を強調。法案は「われわれの未来に大きな影響を与えるものだ」と満足感を示した。

競争激化
 AIを規制する動きは世界的な広がりを見せる。バイデン米大統領は10月、AIのリスク管理のため、国家や経済の安全保障への影響が懸念される高度なAI技術の開発企業に、安全試験の結果などの情報提供を義務付ける大統領令を出した。
 中国は世界各国とAIの秩序ある発展を目指す「グローバルAIガバナンスの提唱」を発表。米国に対抗して国際社会に浸透させ、主導権を握りたい考えとされる。
 ただ、中国は知的財産権侵害や偽情報拡散、AIによる国民の監視などが指摘される。7日に訪中したフォンデアライエン欧州委員長はEUの法案は「われわれの基本的権利と価値観を守るためのものだ」と強調。中国との協力を模索すると述べ、影響力を発揮していく考えを示した。(ブリュッセル共同=桜山崇)