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人件費、0・88%増で決着 来年度診療報酬改定 賃上げ対応 医療現場の人材確保


人件費、0・88%増で決着 来年度診療報酬改定 賃上げ対応 医療現場の人材確保 診療報酬改定率の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は15日、医療機関の収入に当たる診療報酬の2024年度改定で、医師や看護師ら医療従事者の人件費などに相当する「本体」部分を0・88%引き上げる方針を固めた。賃上げを後押しし、医療現場の人材確保を図る。診療報酬のうち医薬品の公定価格「薬価」は市場取引価格に近づけ0・96%減とする。本体と薬価を合わせた全体はマイナスとなる。介護事業所に支払う介護報酬は24年度改定で1%以上のプラスとする方向となった。
 物価高騰の中で岸田政権が看板とする「賃上げ」を強調した一方、少子高齢化社会で持続可能な社会保障制度を構築する歳出改革に課題を残した。
 診療報酬については、岸田文雄首相と鈴木俊一財務相、武見敬三厚生労働相が15日、官邸で協議し折り合った。本体は、前回(22年度)改定の0・43%プラスを大きく上回った。0・88%のうち賃上げ対応のための引き上げ幅は0・61%。
 医療費は患者の窓口負担や保険料、国費などで賄われる。診療報酬を引き上げれば医療従事者の処遇改善を後押しできる半面、保険料など国民の負担が増える。診療報酬の1%分は、保険料や国費などの負担で計約4800億円に当たる。
 診療報酬改定は、予算編成の焦点の一つ。23年春闘では約30年ぶりの高水準とされる賃上げが実現しており、厚労省は医療従事者の待遇改善のため1%台半ばの引き上げを求めた。財務省は診療所のもうけが多いとして、医療費抑制のため0・2%程度を主張。激しい攻防を展開し、協議は難航していた。
 診療報酬改定 患者が公的医療保険を使って医療サービスを受けた際、病院や薬局に支払われる公定価格「診療報酬」を見直すこと。原則2年に1回行う。手術や検査など個別の単価は、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会の検討を経て決める。介護報酬と障害福祉サービス報酬は3年に1回改定する。2024年度は診療、介護、障害福祉サービスの三つの報酬改定が重なるため、利用者や財政への影響が大きい。