有料

MBO 初の1兆円超 23年 非上場で長期成長へ


MBO 初の1兆円超 23年 非上場で長期成長へ 自社買収(MBO)の件数と金額の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 経営陣による自社買収(MBO)が金額ベースで急増し、2023年は総額が初めて1兆円を超える見通しであることが16日、企業の合併・買収(M&A)助言会社レコフの調べで分かった。過去最高の更新が確実になった。MBOを通して上場を廃止し、「物言う株主」が要求する短期的な株価向上策に左右されず中長期の成長を目指す企業が目立ってきた。
 レコフによると、12月11日時点でMBOの発表件数は17件となり、21年の19件に迫る高水準。株式買い付けの総額は、7千億円を超える巨額MBOの大正製薬ホールディングスを含め、1兆4153億円に上った。
 背景として東京証券取引所が3月、株価の裏付けとなる企業価値の向上策を開示するよう主要上場企業に要請。特に、時価総額が純資産を下回る企業は成長性が評価されていないと指摘し、改善を迫った。経済産業省も企業買収に関する指針を8月に示し、買収提案を受けた企業は誠実に対応するよう求めた。経営側にとっては負担増で、市場からの退出を選ぶ企業が増えた。
 大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは「資本市場からの目線が厳しくなり、上場のコストは重くなっている」とみる。大正製薬は「(上場を続けると)株主を意識した経営が求められ、短期的な利益確保、分配への配慮が必要になる」と説明。機動的に意思決定できる経営体制に向けて、非上場化を選択した。
 一方で非上場の企業は一般の株主による監視を逃れ、経営の規律が緩むとの見方もある。吉川氏は「市場からのプレッシャーがなくなる中で、上場廃止後の企業統治のあり方を工夫する必要がある」と指摘した。