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企業支援のノウハウ公表 金融庁 実態把握、改善の応用力課題


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 金融庁は、地域金融機関などが中小規模の製造業、サービス業、医療業の経営を支援するためのノウハウをまとめた「業種別支援の着眼点」の試行版を公表した。3月に公表した建設業、飲食業、運送業などの「着眼点」の続編に当たる。
 作成には、北門信用金庫(北海道滝川市)の伊藤貢作企業支援室長が関わった。伊藤氏は「支援担当者が最低限知っておくべきポイントをまとめた。実際の現場では、資産や事業の実態を把握し、損益を改善させる応用力が問われる」と語る。
 製造業の場合、売上原価を材料費、労務費、外注費に分解すれば、その企業が「自社製造・加工型」か「外注中心型」か「加工特化型」かの目星を付けられるという。
 損益改善に向けた具体策は、事業の実態によって変わる。自社製造・加工型では労務管理や生産体制の変更、外注中心型では外注先との関係見直しなどが必要になる。
 サプライチェーン(供給網)全体を見渡して、製造、加工、組み立て以外で仕事を請け負える範囲をどれだけ広げられるかもポイントとなる。
 企画、設計、原材料調達といった「前工程」、検査、保管・運搬、流通といった「後工程」で仕事を請け負うことができれば、取引先との交渉力が強くなり、価格などの条件を改善できる可能性が生まれるからだ。
 生産体制の変更では、こんな事例もある。岐阜県大野町で洋菓子製造を手がける「ヌベール」は、ブライダルの引き出物用菓子の収益性低迷が課題だった。
 新型コロナウイルス禍の2021年6月、岐阜県信用保証協会の経営改善支援を受け、工場の生産体制見直しに着手した。これにより一つの生産ラインで半日ごとに別の商材を生産する体制を確立し、収益性を高めた。
 岩間洋一社長は「思い切って操業を停止し、生産工程を改革したことが大きかった」と語った。
 改革後は、複雑化する生産計画を実行する生産管理責任者の力量が問われる。岩間社長は、社員の勤続年数や熟練度を以前よりも重視するようになったという。
 岐阜県信用保証協会は北門信金の伊藤氏を招いて勉強会を開き、企業支援に役立てている。中小企業がコロナ禍で膨らんだ債務を返済するには、地域金融機関の支援力強化が鍵となる。 (共同通信編集委員・橋本卓典)