有料

損保4社に改善命令 金融庁 共同保険カルテル疑惑


損保4社に改善命令 金融庁 共同保険カルテル疑惑 損害保険大手によるカルテルが疑われる主な取引先
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 金融庁は26日、企業や官公庁向けの共同保険でカルテルが疑われている損害保険大手4社に対し、保険業法に基づく業務改善命令を出した。カルテルが疑われる契約先は576団体に上った。損保大手への一斉処分は、医療保険などで大量の保険金不払いが問題となった2007年以来、約16年ぶり。鈴木俊一金融担当相は同日の閣議後記者会見で、法令順守の意識の低さを問題視し「悪質性は高い」と指摘した。

企業・官公庁576団体に
 4社は東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。営業担当者が保険料のシェアを従前通り維持できるよう、入札前に取引先の保険料を調整するという不適切な行為が広く認められた。金融庁は業務改善命令で各社の経営陣に対し、経営責任の所在の明確化と、抜本的な経営管理体制の見直しを求めた。
 共同保険は、複数の損保が一つの契約を分担して引き受ける仕組み。担当者同士が直接連絡を取り合って提示額をそろえるなど、入札の形骸化が横行していた。金融庁は、取引先への営業協力の度合いによってシェアが決まる不適切な慣行などが問題の温床になったとみている。
 事前調整は自然災害が多発し4社の火災保険の収支が悪化した17~20年に増加しており、担当者が取引先との契約継続を社内で強く求められていたことが背景にあるという。顧客である企業の代理店から、保険料の調整を損保各社に提案したケースもあった。
 改善命令を受けた4社は26日、独禁法に関する研修を強化するなど「再発防止に取り組む」とするコメントを出した。
 金融庁は2回にわたって4社に報告徴求命令を出し、問題の原因を調べていた。独禁法違反の疑いでは、公正取引委員会が今月19日に4社への立ち入り検査を実施しており、押収した資料を精査して実態解明を進めている。

 共同保険 複数の損害保険会社が一つの契約を分担して引き受ける保険。リスク分散が目的で、事業規模が大きく、高リスクの契約で一般的。企業や自治体といった契約者は、提示された保険の引き受け条件を基に各損保のシェアを決め、シェアに応じて各損保に保険料を支払う。事故があった場合は、各損保がシェアに応じて保険金を支払う仕組みだ。