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在宅避難者 把握に遅れ 能登6市町 支援不足、健康悪化懸念


在宅避難者 把握に遅れ 能登6市町 支援不足、健康悪化懸念 在宅避難者把握の流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震で被災後、避難所ではなく自宅で暮らし続ける「在宅避難者」の人数などの実態を、石川県珠洲(すず)市や輪島市など6市町が把握できていないことが26日、分かった。避難所での対応や2次避難の調整などに人手を取られ、確認が遅れている。自治体が健康の変化やニーズを確認できず支援が不十分となり、災害関連死などにつながる恐れがある。
  (23面に関連)
 県は19日、避難所以外で生活する被災者の専用窓口を設けて居場所などの情報を登録するよう呼びかけ、25日正午時点で5453人の届け出があった。ただ在宅避難者以外も含まれており情報を精査中。未登録の人も多いとみられ、全容把握には時間がかかりそうだ。
 介護が必要な家族がいるなどの理由で避難所に行かなかったり、避難所生活にストレスを感じて自宅に戻ったりした被災者は少なくないとされる。地震で損壊した自宅で暮らす人もいる。
 内閣府によると2011年の東日本大震災では、岩手県で最大約2万4千人が在宅で避難所に通い食事などの支援を受けた。宮城県石巻市では物資配布を通じて把握し、最大約6万1千人いた。16年の熊本地震では避難者の半数が在宅避難を経験した。
 地震による被害が大きく、被災者数が多い珠洲、輪島、七尾の3市と能登、穴水、志賀(しか)の3町に取材したところ、いずれもこうした在宅避難者の人数などを把握していなかった。
 穴水町の吉村光輝町長は実態確認を急ぐとし「助けを求めず我慢している方は多い。どうやって支援や情報を届けるかは大きな課題だ」と指摘。輪島市職員は「名簿などで確認できる避難所と違い、自宅の場合は難しい。在宅でも物資の提供を受けられると周知している」と説明する。
 県によると、避難所以外で生活する被災者はLINE(ライン)や電話で情報を登録。県は市町と共有し、物資や医療支援につなげたい考えだが、親戚宅への避難者なども含まれ、精査や集約ができていないという。
 石川県内では26日時点で約4万4千戸が断水状態。停電も25日時点で約4600戸に上る。在宅避難者の支援に当たる日本災害看護学会の酒井明子副理事長は「障害があるなどの理由で避難所には入れず、自宅にとどまらざるを得ない被災者は多い」と指摘。依然厳しい環境で災害関連死の増加につながる恐れがあり、早急な実態把握の必要性を訴えた。