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長期避難で廃業相次ぐ/生活の場破壊、再建断念


長期避難で廃業相次ぐ/生活の場破壊、再建断念 工房の廃業を決めた大場康一さん=25日、石川県輪島市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市、珠洲市の商工会議所に、加盟事業者からの廃業の届け出が相次いでいる。伝統工芸の輪島塗や名産品の関連産業では、高齢の職人が多く、長期避難で再建を断念しているとみられる。連絡がつく事業者は一部で、廃業は増える可能性がある。
 輪島市で100年近く続くガラス工房を営む大場康一さん(82)は、孫の転校に合わせて金沢市のみなし仮設住宅へ引っ越すため廃業を決めた。輪島塗の絵を飾るパネル向けにガラスなどを納品してきたが「生活基盤がなく取引先の見通しも立たない。事業継承も諦める」と話す。
 市内では観光名所の「朝市通り」一帯が火災で全焼した。輪島塗の製造組合に所属する103社のうち13社の事業所が焼失、30社の事業所が全壊した。輪島商工会議所には千を超える事業者が加盟し、輪島塗関連が多い。坂下利久専務理事は「廃業連絡が日々来ている状態。地域存続の危機だ」と述べた。
 輪島漆器商工業協同組合の隅堅正事務局長は「元通りになるまで2~3年はかかる。産業復興にはまず生活の場を確保する必要がある」とし、断水や隆起した道路の早期復旧を求めた。
 珠洲商工会議所では26日、避難所から通勤する職員らが、電話で生産設備の損傷や再建見通しを確認していた。約540の会員事業所がある。このうち連絡が取れているのは2割程度。袖良暢事務局長は「連絡の取れない会員は被害がより大きく心配だ」と説明した。