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カスハラ条例制定へ/東京都方針/従業員への暴言防止/認識広がり期待


カスハラ条例制定へ/東京都方針/従業員への暴言防止/認識広がり期待 カスタマーハラスメントの主な事例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 客が従業員らに理不尽な要求をする「カスタマーハラスメント」(カスハラ)の防止策として、東京都が条例を制定する方針を固めたことが20日、分かった。カスハラを巡る条例が制定されれば全国初。罰則のない「理念条例」とする方向で検討しており、2024年度内の都議会への条例案提出を目指す。
 小池百合子知事は、20日開会した都議会定例会の施政方針演説で「カスハラが都内企業においても深刻化している。東京ならではのルール作りが強く求められている」と意義を述べた。
 カスハラは顧客や取引先による従業員への暴言や脅迫、過剰な要求、商品やサービスへの不当な言いがかりといった迷惑行為。交流サイト(SNS)で個人情報を拡散させるなどインターネット上で被害を受ける場合もある。
 都関係者によると、条例案ではカスハラが許されないことを周知し、具体的な禁止行為についてはガイドラインを策定して示す方針。今後、詳細な内容の検討に入る。
 都は昨年10月、経済や労働団体、有識者による検討部会を設置し、カスハラ防止策の検討を進める。今年2月に開いた3回目の会議では「都独自の条例化が有効」との意見で一致。罰則対象外の行為が許されるという誤った印象を与えかねないことを理由に、理念条例が適当との指摘も出た。

 カスタマーハラスメント(カスハラ) customer(顧客)とharassment(嫌がらせ)を組み合わせた造語。客や取引先が立場を利用して従業員らに暴言を吐いたり、商品・サービスに不当な言いがかりをつけたりする迷惑行為を指す。従業員が心身に不調をきたして離職に追い込まれるなど社会問題になっている。厚生労働省は2022年、企業向けの対策マニュアルを作成した。

 関西大の池内裕美教授(社会心理学)の話 東京都のような注目を集める自治体がカスハラ防止に向けた条例を制定することで、カスハラという言葉を知らない人々に社会問題として認識してもらえる効果がある。他自治体への波及も想定され、意義は大きい。従業員保護の観点からは罰則を設ける方が望ましいかもしれないが、客を「犯罪者」と扱うことは、企業側に戸惑いも生じかねない。罰則なしの緩やかなガイドラインの方が、客に「それ以上はカスハラです」と忠告しやすく、結果的に抑止効果があるのではないか。