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「性的同意」太田啓子弁護士に聞く こまめな意思確認を 性教育不足、理解進まず


「性的同意」太田啓子弁護士に聞く こまめな意思確認を 性教育不足、理解進まず 性的同意を巡る主なポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 芸能人やスポーツ選手から性加害を受けたとする告発が相次ぐ。当事者間で事実関係の主張が食い違い、刑事事件や民事訴訟に発展することも。正しい理解が求められる「性的同意」について性加害に詳しい弁護士の太田啓子さんに聞いた。

 世の中の性加害トラブルの多くは、性行為自体よりも性的同意の有無が争点になります。加害者側は「同意があった」と主張することが多いですが、その場合、そもそもの考え方が間違っていることがしばしばです。
 性的同意とは性行為やキス、ハグなど全ての性的な行為の意味を互いに理解した上で承諾していること。相手が配偶者や交際相手であっても同じように同意が必要です。
 「嫌だと言わなかった」「誘いを断らなかった」は同意になりません。古い価値観に基づく考え方はいまだに根強く、「NO」と言えない状況に追い込む手口を性的同意の取り方と捉える誤った認識が、社会の一部にはびこっていると感じます。
 要因の一つが性教育の不足です。性的同意やジェンダー平等なども学ぶ「包括的性教育」は浸透しておらず、性的同意とは何かを明示的に教わっていない人がほとんどのため、社会の理解が進んでいないのが現状です。
 一方、昨年夏に改正刑法が施行され、強制性交罪の名称が不同意性交罪に変わりました。特に「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力」を悪用し、嫌だと言えない被害者と性的行為をすることも罪と明文化されたことは一定の進歩といえます。
 教師と生徒、上司と部下、コーチと選手など、明確な上下のある関係性では性加害が起きる潜在的リスクがあります。被害者が加害者に対し敬意や憧れなどの好感情を持っている場合もありますが、それは性的同意とイコールではありません。加害者が勝手に読み替えたり、混同したりすることが問題です。
 強い立場の人は権力や影響力があることの加害性を自覚していないことが多く、注意が必要。弱い立場の人は、被害に遭っても自分を責めないでほしい。弱い立場につけ込む性加害があると知っておくと、万一の時に「これがそうかも」と気付きやすいと思います。
 性的同意を10代の若者に説明する際は「必ず相手が嫌じゃないかどうか、言葉でこまめに聞くことが大切」と伝えています。単純ですが、大人も同じです。相手が嫌だと言ったら、その段階でやめるべきです。細かい同意を積み重ねることが、性的同意のあるべきコミュニケーションです。

おおた・けいこ 1976年生まれ。神奈川県弁護士会所属。セクハラや離婚事件を多く担当。著書に「これからの男の子たちへ」