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災害の歴史、教訓生かせ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 能登半島や富山県の沿岸で確認された津波堆積物は数千年にわたる「災害の歴史」を伝える証人だ。そのメッセージを読み解き、教訓を将来の防災に生かすことが現代に生きるわれわれの責務だろう。
 能登半島地震の発生直後、避難した住人からは「能登に津波が来るとは思わなかった」という声が聞かれた。1983年の日本海中部地震や北海道南西沖地震(93年)でも能登半島の石川県輪島市などへ津波が到達したが、世代交代などで風化が進んでいるようだ。
 文献をひもとくと、日本海側での大地震や大津波は少なくない。古くは平安時代前期の830年と850年、出羽国(秋田県、山形県)で地震があった。850年の地震では山が崩れ、最上川の岸が崩壊。津波が出羽国府(山形県酒田市)まで約3キロに迫ったという。
 1833年には庄内沖(山形県沖)の日本海で大地震(推定マグニチュード7・5)が発生。大津波が秋田、山形、新潟、石川県の沿岸を襲い、遠く隠岐諸島(島根県)でも被害を出した。
 過去の地震や津波は、いつかまた繰り返す。研究者は常識にとらわれず、日本海側の調査データを洗い直してほしい。必要なら国には追加調査を望みたい。多くの命を救うため、災害の歴史の実態解明が急がれる。