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<転換 経済の実相>下 米AIブーム、相場けん引 海外投資家、日本株再評価


<転換 経済の実相>下 米AIブーム、相場けん引 海外投資家、日本株再評価 中国上海市で各株式市場の指数を表示するボード=23日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日経平均株価の最高値更新を後押ししたのが米半導体エヌビディアの好決算に象徴される人工知能(AI)ブームだ。米国のダウ工業株30種平均は4万ドルに接近し、日本でも半導体関連銘柄が相場上昇を主導した。海外投資家が日本企業の収益力を再評価し、株価上昇への期待が広がったほか、中国の景気低迷を受けて投資マネーが日本に向かったことも影響した。
 「時価総額の大きい企業の潜在的な収益力が市場をけん引している」。米国みずほ証券チーフエコノミストのスティーブン・リチウト氏は米市場をこう分析する。その代表的な存在が「マグニフィセントセブン(M7、壮大な7銘柄)」だ。
 今年に入りダウ平均が過去最高値の更新を繰り返す中、米メディアで連日この言葉が躍った。アップルやグーグルなどGAFAと呼ばれる巨大IT企業4社に、マイクロソフト、エヌビディア、電気自動車(EV)大手テスラの3社を加えた7銘柄を指す。エヌビディアは23日に時価総額が一時2兆ドル(約300兆円)の大台を突破し、強気相場を引っ張る存在だ。
 ただ、先行する期待とは裏腹に、AIがどれだけ企業の生産性を高め、収益向上に力を発揮できるかには不確かな面もある。UBSグローバル・ウェルスマネジメントのマルチ・アセット・ストラテジスト、キラン・ガネーシュ氏は「何らかの理由でハイテク企業への見方が悪化すれば、相場全体に影響が広がる可能性がある」と一定の警戒の必要性を指摘した。
 外国人投資家が企業価値に対して株価が割安とみた日本株を買い進めたことも平均株価上昇に貢献した。東京証券取引所によると、外国人投資家は2023年に購入が売却を上回る「買い越し」。同年に米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が三菱商事や三井物産など日本の五大商社の株買い増しを表明したことが海外投資家の「日本株見直し」の流れにつながったとする見方もある。
 中国の投資家も日本株に熱視線を向ける。資本規制が厳しい中国では、日本株の上場投資信託(ETF)5銘柄が日本株を購入できる限られた選択肢だ。今年1月には取引量が急増し3銘柄が最高値を付けた。不動産不況が景気の足を引っ張る中国株を避け、平均株価などと連動するETFに資金を振り向けている。
 岡三証券上海事務所の久保和貴所長は、現地証券会社から日本経済に関する情報を求める要望が昨年春以降に増えたと指摘し「中国の証券会社も注目している」と日本株ブームへの手応えを口にした。(ニューヨーク、上海共同=杉山順平、隈本友祐、柴田智也)