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道路寸断恐れ 109市町村 災害時 原発30キロ圏、避難に支障 地理データ分析 東日本大震災13年


道路寸断恐れ 109市町村 災害時 原発30キロ圏、避難に支障 地理データ分析 東日本大震災13年 東北電力東通原発、電源開発大間原発とキロ圏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 建設中を含む国内19原発の30キロ圏にある自治体のうち18道府県計109市町村で、地震など災害時の緊急輸送道路が土砂崩れなどにより寸断される恐れがあることが8日、分かった。30キロ圏に含まれる21道府県計138市町村の79%に当たり、原発事故時の避難に支障が出る恐れがある。東京電力福島第1原発事故から13年。国土交通省が公開している地理情報データを基に、道路が土砂災害警戒区域を横断しているかどうかを共同通信が分析した。
 1月の能登半島地震でも土砂災害が多数起き、北陸電力志賀原発(石川県)周辺の道路が通行できなくなった。各地の原発で再稼働が進む中、代替路の整備や、道路寸断も念頭に置いた避難計画、訓練の徹底が求められる。
 警戒区域は、がけの傾斜などに基づき、地震や豪雨で崖崩れや地滑りが起きるリスクのある場所を都道府県が指定する。
 避難経路を事前に定める必要がある原発30キロ圏を調べた結果、国道、県道など109市町村で延べ約500本の緊急輸送道路が警戒区域を通っていた。多くの原発が半島部の山がちな地形に近接するなど、立地が影響している。
 18道府県への取材によると、2023年度に道路寸断を想定した実動訓練を実施したのは11道県。北海道は「土砂崩れなどで通れなくなったと想定し、重機を用いて撤去する訓練を行った」と説明。石川県も23年11月、避難先に設定した場所へ住民をヘリコプターで運んだ。
 確実な避難にはバイパス道路など複数のルート確保や道路の拡幅も必要となる。愛媛県は「円滑な避難のため、緊急輸送道路の改良を進めている」と強調。原発立地自治体などで構成する「全国原子力発電所所在市町村協議会」は政府に対し、避難に不可欠な道路整備に十分な財政措置を講じるよう求めている。
 岐阜、鳥取、山口3県は30キロ圏に、警戒区域にかかる緊急輸送道路がなかった。

<分析の方法>
 国土交通省がインターネットで公開している、地形や行政区域、公共施設の位置などの地理情報データ「国土数値情報」を用いた。原発30キロ圏で、緊急輸送道路と、土砂災害警戒区域が重なっている地点を抽出。自治体数を集計した。道路の本数については、複数の市町村にまたがる場合、それぞれ1本として計算した。対象とした19原発には、廃炉が決まっている東京電力福島第1・第2両原発(福島県)と、建設中の電源開発大間原発と東京電力東通原発(いずれも青森県)を含めた。