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日産 賃上げ減税対象外 最低1年 下請法違反、勧告受け


日産 賃上げ減税対象外 最低1年 下請法違反、勧告受け 日産自動車グローバル本社=3月、横浜市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日産自動車が下請法違反で公正取引委員会から勧告を受けたのに伴い、賃上げに積極的な企業の法人税を軽減する優遇税制を利用する資格を失ったことが6日、分かった。下請け企業への納入代金を発注後に減額するなどの姿勢が問題となったためで、少なくとも1年間は資格が戻らない。2023年度分の法人税を納税する際に見込んでいた減税が受けられなくなり、利益の押し下げ要因になる可能性がある。
 賃上げ税制は、継続雇用者の給与などの総額を前年度より増やした企業の法人税を減税する仕組みで、13年度に導入された。制度が拡充された22年度は減税額が5150億円まで伸び、導入以降で最大となった。日産も22年度分の納税まで制度を利用しているという。
 ただ大企業が制度を利用するには、下請けいじめを防いで取引適正化に努めることなどを約束する「パートナーシップ構築宣言」を、政府などがつくる専用サイトで公表することが必要となる。日産は今年3月に公取委の勧告を受けて掲載が削除されたため、対象から外れた。一度削除されると少なくとも1年間は再掲載されず、税優遇が適用されなくなる。
 日産は23年春闘で、労働組合が要求した月額平均1万2千円の賃上げに満額で回答。3・4%の賃上げを実施した。今春闘でも5%の賃上げ率となる1万8千円の要求に満額で応じている。下請法違反がなければ23年度分の法人税は軽減対象となったとみられる。
 22年度分にさかのぼっての返納は生じない見通し。最短の1年間で宣言が再掲載できれば、24年度分から資格が戻る。
 日産の下請法違反を巡っては、約2年間に部品メーカーなど36社に対し、一度決まった支払代金から計30億円超を不当に減額したと公取委が認定。再発防止を勧告した。

 賃上げ税制 賃上げ率が一定水準を上回った企業の法人税を軽くする減税措置。第2次安倍政権下の2013年度に導入され、岸田政権が22年度税制改正で控除率を引き上げるなどして強化した。24年度税制改正では、子育て支援や女性登用に積極的な企業ほど優遇を強化するなどの見直しを実施。法人税を納めていない赤字の中小企業でも、賃上げをした場合は将来の黒字を見込んで一定期間、減税の権利を繰り越せるようにした。