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公的機関は主体的支援を 苦境の中小企業対策


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が3月に策定した新型コロナウイルス禍で苦境に陥った中小企業への支援を強化するための施策「再生支援の総合対策」では、信用保証協会などの公的機関に主体的な企業支援を求めた。資金繰り支援策として講じられた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の一部返済が本格化したことを踏まえた措置だ。
 デフレ脱却には、日本の従業員の約7割を雇用する中小企業が持続的な賃上げを実施することが欠かせない。そのためには業績不振の中小企業を再生に導き、賃上げの源泉となる「稼ぐ力」を伸ばす必要がある。
 総合対策は、全国の信用保証協会と中小企業活性化協議会による中小企業支援の強化を打ち出した。
 ゼロゼロ融資の返済が困難な場合、金融機関への返済を肩代わりするのが信用保証協会だ。中小企業活性化協議会は債権放棄や返済猶予などの金融支援が必要な場合、経営改善計画を策定する調整機能を担う。
 総合対策では、信用保証協会が支援先企業の売上高営業利益率など「効果検証指標」を設定し、目標と実績を公表することを盛り込んだ。経営改善支援が奏功したのかどうかを明らかする。政府は6月にも信用保証協会の監督指針を改正する。
 中小企業活性化協議会への監督も強化する。4月からは、企業からの相談や企業支援の件数が少なく、支援の質が低い「低評価協議会」には業務改善計画の策定を義務付ける。改善計画には、支援件数の増加策、支援体制の整備を明記させる。
 信用保証協会には、中小企業活性化協議会への案件持ち込み実績も公表させる。
 企業支援が形骸化していた事例がある。ある県の信用保証協会は、中小企業診断士を企業支援の専門家として、業績不振の企業に派遣していた。しかし支援効果を出すことよりも派遣の実績づくりを優先し、「支援能力が低く、暇な診断士を送っていた」(この県の中小企業診断士)という。
 これまで中小企業関連の公的機関は自らを「黒子」と称してきた。だが、ともすると「企業支援は金融機関の仕事で、公的機関は受け身で構わない」という消極的な姿勢につながっていた。
 企業支援に必要なのは消極的な「黒子」ではない。企業損益の改善という確かな成果につなげる公的機関だ。
 (共同通信編集委員・橋本卓典)