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値下がり 冷静な対応を 政府は市場の声聞いて


値下がり 冷静な対応を 政府は市場の声聞いて
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日経平均株価(225種)の下げ幅が5日、ブラックマンデーを超え史上最大となった。米国株式市場が大幅安となった流れを引き継ぎ、約7カ月ぶりの円高ドル安水準となったことも重荷となった。底が抜けたような相場に、市場参加者の間ではパニック売りの様相もみられた。
 日本の実体経済に何か決定的に悪い状況が発生したわけではなく、経済政策や企業業績の実態を反映した値動きではない。極端な値下がりではあるが慌てることなく、冷静に状況を分析することが重要だ。
 相場が軟弱になっていたのは、雇用統計など悪い経済指標が相次いで発表され、米国経済の先行き不透明感が急激に強まったためだ。それに加え、これまで自動車などの輸出企業の業績向上を支えてきた為替相場が円高に転じたことも投資家の弱気を誘った。
 日本経済の雲行きが変わる可能性をかぎつけた海外投資家が大規模な売りに出て、それに国内投資家が追随したのが相場の大崩れにつながった。しばらくは弱気の相場が続く可能性があるほか、日本株の下落が海外市場の下げを誘い、それが再び、日本市場の下げを誘発する恐れもある。
 実体を反映していない株安とは言え、無視していいレベルの値動きとはとても言えないだろう。政策当局者や企業経営者は市場からのメッセージを真剣に受け止める必要があるのではないか。
 日本経済は回復途上にはあるものの、盤石とはとても言えない。欧米がデジタル経済市場を開拓、席巻する中で、脱炭素を含め日本の成長戦略は精彩を欠く。コロナ禍から続く財政拡張主義は見直されず、先進国で最悪の財政状況は改善の兆しが見られない。
 そんな中で、日銀は長年続いた金融緩和から転換、利上げ政策に転じて日本は久しぶりに「金利のある世界」に戻った。こうした経済の正常化に企業や家計が順応していけるのか。株価の史上最大の下げは、こうした日本経済の弱点を突いてきたように思える。
 林芳正官房長官は「政府としては引き続き緊張感を持って、市場の動向を注視するとともに、経済財政運営に万全を期したい」と述べた。
 新たな日本経済の在り方を、官民で探り始める時が来たようだ。(共同通信編集委員 高山一郎)