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子どもの体験 社会で支える 所得による「格差」解消へ CFCの今井悠介さん


子どもの体験 社会で支える 所得による「格差」解消へ CFCの今井悠介さん 長野市で開かれた、子どもたちの「体験」のためのイベント(ⓒ丸田平)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 経済的に余裕がない家庭の子どもは、音楽やスポーツなどの習い事やキャンプといった放課後、休日の体験が難しい実態がある。学校以外の体験の大切さを唱え「格差」解消に取り組むのが、公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」(CFC)。今井悠介代表理事は、子どもたちが親の所得によってやりたいことを諦めなくても済むよう、「社会として体験機会を支えるべきだ」と話す。
 CFCの調査で話を聞いたあるシングルマザーは、小学生の息子から「サッカーがしたいです」と泣きながら言われた、とのこと。多くの事を我慢させてきたためかなえてあげたいが、練習への送迎で早退を繰り返すと仕事を失うかもしれないと心配そうな様子でした。
 2022年秋、小学生の保護者約2100人に行った調査では、学習塾を除く習い事や旅行、動物園を訪れるなどの機会が1年間でゼロと回答したのは、年収300万円未満の世帯で約3分の1に上りました。14年に「子どもの貧困対策推進法」が施行され、貧困問題自体は認識されましたが、幼少期の体験まではなかなか目が向けられてきませんでした。
 学校では基本的には学力という一つの基準で比較されますが、勉強以外で音楽、スポーツなど好きなことや「できる」と思えるものが一つでもあると大きなよりどころになります。付随する人との出会いが価値観を揺さぶり、視野を広げ、想像力や選択肢の幅に影響を与える。将来の生活や仕事の広がりにも関わってくるでしょう。貧困の連鎖の根っことして体験格差は見過ごせません。
 無理に習い事を詰め込むと、体験が「させられる」ものになってしまいますが、本人のやってみたい気持ちは大事にしてあげたい。子どもの意思や主体性をないがしろにしない社会のあり方が求められています。
 長野市では市内の小中学生に電子ポイントを配布し、スキーや料理教室などさまざまなプログラムに参加してもらう事業を行っています。今後こうした公的支援を広く議論していく必要があるでしょう。CFC独自では北海道や宮城県石巻市、岡山市、那覇市などで地域の教室と子どもをつなぎ、奨学金を出すなどしています。取り組みを通じ、地域の人が「提供できる体験」を持ち寄ってくれて世代間の交流が生まれています。子どもの体験を社会で支えることが、地域づくりにもつながると感じています。 (談)