県教育委員会は高校生の県外大学進学を後押しするキャリア・ビルドアップ事業「進学エンカレッジ推進事業」に取り組んでいる。高校生が県外大学の訪問や県出身大学生との交流を通じて自身のキャリアを考える。県教委によると本年度は例年に増して参加希望者が多いという。9月28日、沖縄市の県立総合教育センターで高校2年生対象の事前研修があり、高校生は県外大学で学ぶ意義を考えた。
同事業は県の大学等進学率向上が目的。県教委によると、県内8大学の1年生の県出身者は8割に達している。そこで県外にも目を向けてもらおうと、2014年に事業を始めた。対象者や参加人数を拡大し、今年は募集定員の約2倍の生徒が申し込んだ。書類や面接を通過した公立私立高1、2年生各240人が参加。本年度は専門高校からの参加が増えている。
学習会や事前研修の後、県外大学での模擬講義や県外大学に進学した県出身者との交流、民間企業を訪問する。高1の訪問先は関東か関西、高2は他に東北や九州など計6地区。研修後は学んだことを参加者にプレゼンテーションし各学校でも報告する。
28日は社会教育士で南風原町議の玉城陽平さん(33)が講師を務めた。大学には(1)アドミッションポリシー(大学が求める生徒像)(2)カリキュラムポリシー(大学の学習課程方針)(3)ディプロマポリシー(社会に送り出す卒業生像)―があり、これらは大学を知り適性を見極め、受験対策をする上で重要だとした。
その上で、三つのポリシーに自分を重ねて考える方法を紹介。生徒は付せん紙に「望む社会像」「思うようになったきっかけ」「実現のために取り組むこと」を書いて発表した。玉城さんは「考えを深めるために生徒同士の話し合いや大学教授・大学生から貪欲に学んでほしい。エネルギーが湧く研究テーマを見つけることが大事」と強調した。
向陽の小林李莉さん(17)は「なりたい職業や学問を知り、社会課題に自分の考えを持てる機会にしたい」と語り、沖縄水産の国吉良虎さん(17)は「都市開発に関心がある。研修を通じて後悔ない大学選びをする」と意気込んだ。
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参加者の8割が進学
文部科学省の学校基本調査(2023年度)によると、22年度卒の沖縄の大学等進学率(短大を含む)は46.3%だった。全国平均は60.8%で、依然として全国との差は大きく全国最下位。しかし県が目標としていた45%を初めて上回り、年々上昇傾向にある。
県教育委員会によると、「進学エンカレッジ推進事業」の参加者のうち、今年3月の卒業生を対象とした調査で、県内外の国公立私立大学に進学した生徒の割合は82.0%だった。事業が始まった14年に参加した卒業生の進学率(56.6%)から上昇しており、県教委の担当者は「一定の成果が出ている」と見ている。