沖縄北部の新テーマパーク 住民は地域活性化に期待 詳細説明なく戸惑いの声も


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ジャパンエンターテイメントがテーマパーク建設を計画するオリオン嵐山ゴルフ倶楽部=6日、今帰仁村

 今帰仁村と名護市にまたがるオリオン嵐山ゴルフ倶楽部で計画するテーマパーク建設に向けて、事業を進めるジャパンエンターテイメント(那覇市、加藤健史社長)は9月に住民向け説明会を実施した。新たな観光施設の完成で、本部町の沖縄美ら海水族館に集中する観光客を呼び込めることから、周辺住民らは地域活性化に期待する。一方で施設の詳細な説明はなく、困惑する声も上がっている。

 ジャパン社は今帰仁村と名護市、本部町の住民らを対象に、9月10日から27日まで計5回の説明会を開いた。沖縄の自然や文化を生かした施設を目指し、2025年の開業を目標としていることが伝えられた。年間来場者数は300万~500万人で、1500~2千人の雇用を見込む。

■建設歓迎

 計画では既存のゴルフ場の敷地を広く活用するA案と、面積を縮小するB案の2案がある。今帰仁村によると、名護市側に張り出さず今帰仁村側で完結するB案が「有力」との説明があったという。

 今帰仁村の観光客数は16年度の92万人をピークに、近年は80万~85万人で推移する。沖縄美ら海水族館があり、年間約500万人の観光客が訪れる本部町と大きな開きがあり、村内への観光客呼び込みが課題となっている。

 村観光協会の玉城喜次会長は「水族館から古宇利島を回り、名護市の商業施設に流れるのが主なルートだ。他の地域は素通りされている」と指摘する。

 村内にテーマパークが完成した場合、周辺地域へ経済波及効果をもたらす可能性も高い。玉城会長は「村内の飲食店不足を解消し、団体客を受け入れる環境を整える必要がある」と述べ、地域の活性化に意欲を見せる。

 ジャパン社の説明会に出席した湧川区の山田重実区長(66)も「多くの区が過疎化に悩んでいる。テーマパーク建設は歓迎だ。若者のための雇用が生まれ、活性化につながる」と期待を込めた。

テーマパークの説明会に参加した人たち=9月11日、名護市の中山区公民館

■動向注視

 住民説明会では施設の概況が紹介された一方で、導入するアトラクションなど詳細は「準備段階」との理由から明らかにされなかった。参加住民からは「どんな施設ができるのかよく分からない」と戸惑いの声が上がった。

 今帰仁村の幹部は「まだ準備段階で、今後どうなるか分からない。客観的に見極めることも必要だ」と動向を注視する構えだ。

 テーマパークの建設予定地周辺は道路が狭く、車両の増加や大型バスなどの通行で混雑も予想される。県内の不動産関係者は「美ら海水族館から家族連れを呼び込める場所にあり立地は悪くない。問題は交通インフラだ」と語る。施設へのアクセス道路建設などが必要となるが、25年の開業までにどこまでインフラが整うか未知数だ。

 ジャパン社は21年度まで環境影響評価の手続きや設計を行い、同年度半ばの着工を予定する。計画が順調に進んで沖縄観光の新たな目玉施設が誕生するのか、地域住民など多くの関係者が動向を見守っている。
 (岩切美穂、平安太一)