[日曜の風]ネット放送「沖縄の声」 まったくのデマ


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 10月10日、私が原告となって、インターネット放送「沖縄の声」のキャスターらとそれを制作した放送局「日本文化チャンネル桜」に起こしていた裁判で、東京地裁はキャスターの発言が名誉毀損(きそん)にあたると認め、放送局とともに100万円の支払いを命じた。

 この裁判で問題にしたのは、「沖縄の声」という番組の中で、私が医師法に違反した行為をして勤務する診療所に保健所が監査に入った、というまったくのデマが語られたことだった。番組側は裁判で、そういう情報をダイレクトメールで教えてくれた人がいたのでそのまま流した、と言ったが少しでも調べればすぐにわかることだ。裁判所も、この番組が「必要な調査や確認を行ったとは認められ」ず、「事実と異なる印象を一般視聴者に与える」ような内容を流したことを判決文で認めた。

 「沖縄の声」では辺野古新基地や高江ヘリパッドの建設反対派の話題も繰り返し取り上げられる。そのトーンは反対派を激しく非難し、ときにはおとしめるようなものだ。出演者らは「デマではない。真実に基づいている」と折に触れて語っているが、本当だろうか。少なくとも同番組で私について語られた内容は事実ではなく、何の取材も裏付けもないまま、ネットのデマをそのまま垂れ流しただけとわかった。基地問題についてもそれと同じ、とは考えられないだろうか。

 裁判は手間もお金もかかり、訴えた側にも大きな負担がかかる。とはいえ、ウソやデマはひとつひとつつぶしていくしかない。チャンネル桜側は控訴すると言っているので、闘いはまだ続く。今後も裁判を通して、基地反対という沖縄の民意を踏みにじる「沖縄の声」という放送がいかにずさんに作られているかを、公にしていきたいと考えている。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)